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 ネパールから飛行機でタイにやってきました。日本へ向けて、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナムを走りました。アジアに入ると、食文化や人の雰囲気がグッと日本と近くなり、他の地域と比べて安心感があります。北米、ヨーロッパ、アフリカ、中東では、どこにいても「外国人」という目で見られ、特に自転車に乗っているため注目を集める存在でした。アジアでは今までと異なり、その場の雰囲気にすぐになじむことができたため、日本はアジアの一部なのだと改めて感じました。

 今回は、特に印象的だったカンボジアを紹介します。カンボジアと言えば、何を思い浮かべますか? ほとんどの人はアンコールワット遺跡群を思い浮かべると思います。アンコールワットに昇る朝日、巨大な顔の石像が特徴のバイヨン、天空の城ラピュタのモデルとなったと言われるベンメリアなどは何度見ても感動し、世界中の観光客を魅了するのもうなずけます。

 しかし、それ以外にカンボジアと聞いてパッと思い浮かぶものはあるでしょうか? 僕が10年前にバックパッカーとして訪れたときの印象は、アンコールワットと喧騒(けんそう)の記憶しかありませんでした。

 自転車の旅はバックパッカーが訪れない小さな田舎町を通るので、その国の本当の姿を知ることができます。カンボジアの田舎を走っていると、どこでも子どもから大人まで〝笑顔のハロー〟で応援してくれます。純粋で真っ直ぐな笑顔はとても心地よく、何ものにも代えがたい幸福感を与えてくれます。

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 沿道からの数え切れない声援は、過去にアフリカのマラウイで経験しています。しかし、そのときはハロー以外に「ギブミー マネー」を1日に何百回も聞かされ、援助の在り方について疑問を感じました。カンボジアも世界中からの援助により成り立っており、日本が最大の開発援助国です。日本政府だけでなく、日本企業からの学校の寄贈も目立ちました。しかし、一度も「ギブミー マネー」はありませんでした。ボロボロの服を着た貧しそうな子も明るく、「ハロー」と言って笑顔で必死に手を振ってくれます。

 カンボジアは約40年前のポル・ポト政権の際、思想改造の名の下に国民の約20%が虐殺されるという悲惨な出来事がありました。旧ユーゴスラビア地区を走ったときも感じましたが、不幸な運命に負けずに乗り越えた人たちは芯が通り、本当に優しい人が多いように感じます。

 カンボジアが貧しさから抜け出すにはまだまだ時間がかかるかもしれませんが、教育水準や治安は確実に良くなってきています。毎日のように人々の明るい笑顔にふれ、カンボジアは大好きな国の1つになりました。

写真上=タ・プロームの大木の下で 同下=「ハロー」と笑顔であいさつ

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 自転車で世界一周の新婚旅行に挑んだ辻陽平さん、夕佳さんの連載は奇数月の第3土曜号掲載で次回は5月21日号。旅の様子はブログ「フィールドテスト 自転車世界一周」で更新中。

(ニュース和歌山2016年3月19日号掲載)