水産業の盛り上げに一役買おうと、加太で生まれ育った坂東隆人さん(36、写真左)と小嶋惟大さん(28、同右)が昨年11月、和歌山市古屋に紀州干物専門店「俺たちの干物」を開いた。近海魚を中心に、無添加にこだわった干物を手作り。2人は「手間をかければかけるほど、おいしくなるのが面白い。本当にうまい干物を味わってほしい」と望む。 (文中敬称略)

加太に根ざして

──昨秋、開店しました。

坂東 2人の実家が加太にあり、近所でした。社会人になって偶然、まちなかで再会し、「2人で何か大きなことをしよう」と盛り上がりました。

小嶋 水産業を営む家で2人とも育ったので、一緒にするのであれば、やはり加太の海につながることをしたいと思いました。干物はシンプルな作り方のものが多く、まだまだ工夫の余地があると考えました。

──アジ、サバ、キビナゴと地元産が豊富です。

小嶋 毎朝、市場で仕入れます。近海魚は良いのが揚がると知り合いの漁師が届けてくれて、早ければ、その日の夕方に干物として店頭に並びます。できる限り近海や県産の魚を使うようにしていて、地元でとれないものは、全国各地を巡って厳選した産地の魚を扱っています。

坂東 新鮮な魚は干物にすると、くさみがなく、うま味があります。小さいころから食べなじんできた加太の魚は、潮の流れが速い紀伊水道で鍛えられ、脂の乗りや身の締まりがよその魚と違います。漁師がメバルやガシラといったあまり干物にされない魚を持ってきてくれることもあり、数は少ないですが、干して食べると絶品なんです。

安心・安全の無添加

──調理方法にはどんなこだわりが。

坂東 サバ、ホッケ、イカ、メジロ、サワラなど県内外の魚介類を扱い、日によって仕入れる魚が変わります。塩干しは、干す前に塩水に漬けるのが一般的ですが、うちは特製のタレを加えたオリジナルの昆布だしを使います。食べた時にふっくらとした食感になり、また、魚の味がしっかりして、かむほどにうま味が出てきます。おいしいものを安心して食べてもらえるよう無添加にこだわり、アレルギーのある人が買いに来てくれます。

小嶋 例えば、みりん干しの場合、しょうゆ、砂糖、酒、水あめ、独自のだしを加えたみりんに漬けて甘みを出します。西京漬けは、契約する専門店が昔ながらの製法で丹精込めて作り上げた白みそを使います。塩分が低く、こうじの風味がきいています。

──店内でも食べられるんですね。

小嶋 干物を深く理解する私達が絶妙の火加減で焼き、魚の風味や食感を引き立たせます。ぜひ、家庭で食べる時の参考にしてほしい。日替わり定食は大きめの肉厚な魚を1匹分使い、ボリューム満点です。

坂東 うちの干物はあっさり味で、「上品な味」と扱ってくれている大阪の飲食店もあります。魚嫌いな子も「ここの魚なら食べられる」と喜んで口にします。

──今後は。

坂東 地産地消を大切にし、地元の魚を増やしていこうと思います。干物で、和歌山の魚の良さを県内外に発信し、水産業の活性化につなげたいですね。

【紀州干物専門店「俺たちの干物」】
和歌山市古屋115-2 ☎073-488-2035
10:00〜18:00 水曜定休
※同市加太のあたらし屋旅館の隣でも販売
 土日のみ10:00〜16:00

(ニュース和歌山/2018年3月14日更新)