和歌山市北東部 伝承裏付ける発見

 和歌山市山口西から楠本にまたがる地区で、中世に造られた堀が見つかった。平安時代終わりから鎌倉時代にかけて、この地域を治めた中村氏の城館「東城」の一部とみられる。県内でこの時代の城館が見つかるのは極めてまれ。

 東城は1906年発行『郷土地図説明附本郡県物産史』、26年発行『海草郡誌』に中村氏の名とともに記録されているが、存在を裏付ける遺跡は発見されていなかった。近くに熊野古道の中村王子社があり、中村氏は周辺を治めていたと考えられる。

 8月2日から12月3日まで県文化財センターが行った調査では、L字型の堀からなべや中国製の磁器などが出土した。さらに古い地層では、弥生時代の終わりから古墳時代初めに造られた竪穴式住居30棟跡と多数の土器が発見された。

 日本城郭史学会委員で、30年前から東城跡を探している水島大二さんは「見つかった堀は石が組まれていないことなどから戦国時代以前のものであることはほぼ確か。長く地元の人たちの口伝えや手記を調査してきましたが、実際に掘り起こされ感動しています」と話している。

写真=「東城」の一部とみられる堀

(ニュース和歌山/2017年12月13日更新)