制服や学用品、入学式や発表会で着る親子の晴れ着を集めたリユース業「小春日和」を和歌山市の竹内千富さん(54)が3月に始めた。女手ひとつで2人の子を育てた経験から、「働きづめで頑張るお母さんにリユース品を選んでもらい、浮いたお金と時間を家族と使ってほしい」と願う。
看護師として30年以上働き、2人の息子を成人まで育て上げた。2人の学生時代は制服や学校指定の備品と物入りで、寝る間を惜しむ忙しい日々。心に余裕をなくして怒りっぽくなり、笑顔が消えた。当時を振り返り、頑張る母親を応援しようと立ち上げた。
店舗はなく、自宅の一室に買い取った幼稚園から高校までの中古の制服、体操服や柔道着など100着が並ぶ。兄弟の卒・入学式に同じ服で写真に収まりたくなかった経験から、タンスの肥やしになりがちな、母親が学校行事で着るスーツとワンピースも集める。
今も午前中は病院で働き、午後は買い取り、クリーニング作業に忙しい。生地の傷みや汚れを細かく確認し、6ランクに分ける。「子どもに少しでもきれいなものを着せたい気持ちが分かるから」と丁寧に洗い、念入りにシミを取る。
起業から1ヵ月、買い取りに訪れた個人宅は10軒あまり。兄弟姉妹で工夫して共用した跡に母親の愛や家族の思い出が見え、こみ上げるものがある。「親の思いがつまったものを、また次の子の思い出づくりに役立ててもらう。買い取り額は安いかわりに、販売価格も安い。『〝この子〟にもう一度日の目を見せてやりたい』という気持ちです」
日差しのように温かな気持ちに包まれた服が、次の出番を待っている。
写真=「もう一度、日の目を」と竹内さん
(ニュース和歌山/2018年5月12日更新)