日本三大漆器産地の一つ、海南市黒江で漆塗りの修業に励む木工作家がいる。昨年11月に奈良県から移住した梅田俊一郎さん(42)だ。黒江ぬりもの館で木漆工展「物造りの町黒江」を5月30日㊍~6月3日㊊に開く。「漆には木工作品に光沢を生み、奥行きを出す美しさがある。地元の方に制作活動を知ってもらう機会にしたい」とほほ笑んでいる。
家具作家 梅田俊一郎さん個展
北海道出身の梅田さんは、高齢者や障害者のリハビリを行う作業療法士をしていた。患者に合わせて車いすやテーブルを調整する中、住環境の大切さを感じ2010年に木工の世界へ。奈良を拠点に、シンプルながらも暮らしに長く寄り添う家具を生み出してきた。
漆との出合いは13年。工芸展で見た根来塗に魅せられ、伝統産業を受け継ぐ黒江の地域おこし協力隊として和歌山へ来た。伝統工芸士らに漆の製法や塗りの基本を学びながら、戦後まで塗師が使っていた漆器問屋を工房に、江戸時代の職人さながらの環境で作品づくりに打ち込む。「おわん一つ塗るのに完成まで半年かかる。何事にも速さが求められる今の時代とは逆行しているけれど、漆は時間をかけるほど良くなる」と語る。
木工で培った技術を生かし、木地をはじめ、はけやへらなどの手道具も自作する。目標は、紀州漆器発祥のきっかけとなった、県産ひのきで作る紀州椀を手がけること。「協力隊任期の3年でできるかは分からない。黒江とかかわり続け、いつか実現したい」と描いている。
個展では、木の風合いを生かした漆の皿と盆のほか、イスやテーブルなどの家具を展示。午前11時~午後5時。同館(073・482・5321)。
写真=漆を乾かす室(むろ)が残る元漆器問屋で、作品を生み出す梅田さん
(ニュース和歌山/2019年5月25日更新)