人手不足に悩む介護業界で、外国人に門戸が開かれてきた。国は介護福祉士資格があれば就労できるビザを今月新設。これを見越し、和歌山YMCA国際福祉専門学校が昨年、高齢者施設に協力を募り、奨学金を準備して留学生を呼び寄せる事業を始めた。介護分野での外国人就労は2008年、経済連携協定を結ぶ国から介護福祉士候補者を受け入れたのが最初。今回の介護ビザ新設で、人材をさらに広く求められることになった。

 民間奨学金で人材確保 受け入れ制度拡充 追い風に

 ベトナムから留学中のグェン・ティ・ジェムさん(23)、グェン・ティ・アンさん(23)は、日本語科の授業が終わると和歌山市平尾の特別養護老人ホーム大日山荘に直行する。入居中の赤路登美恵さん(73)が「日本語がだんだん上手になっていますよ」とほほ笑み、2人は「介護を勉強し、お年寄りの力になりたい」と口をそろえる。

 2人は和歌山市太田にあるYMCAに通いながら、介護補助に当たる。学費や住居費、生活費は、奨学金として大日山荘が負担。日本語を2年、介護を2年学び、卒業後4〜5年は働く。ビザ新設をにらみ、同校の井之上芳雄校長が全国に先駆けて発案した仕組みだ。

 介護福祉士養成専門学校が置かれる状況は、全国的に厳しい。YMCA介護福祉士科にはかつて1学年80人在籍したが、3年前から20人前後しか埋まらない。打開策として、高齢者施設に呼びかけ、賛同を得た5施設と留学生向け奨学金制度を創設。15年秋にベトナムで50人以上を面接して対象者12人を選んだ。今では総勢34人の外国人が通う。

 ベトナムの看護師資格を持つジェムさんらが介護福祉士科に進むのは来年。井之上校長は「彼女らを単なる労働力とは考えていない。施設の将来を担う人材として、人生の最期に触れる介護の意義や価値を教えます」と熱を込める。

 外国人受け入れは、08年に設けられた国の経済連携協定から始まった。対象はインドネシア、フィリピン、ベトナムの3ヵ国。施設で働きながら介護福祉士を目指せ、4年間で資格を取れば、その後も就労可能だ。

 和歌山市松江東の介護老人保健施設パインドームでは外国人11人が働く。園部勝治郎事務長が将来の人材不足を見越し、09年以降、16人を受け入れてきた。

 ただし、資格を取れたのは1人だけ。それでも、14年から日本語研修期間が長くなるなど制度が見直されたことで、園部事務長は「外国人の比率はさらに高くなる。先に資格を取った人が、これから来る後輩を引っ張ってほしい」と戦力として期待を寄せる。

 県内の介護関連事業所で働く人は13年に2万人弱、25年に2万5000人が必要と見込まれ、外国人に目が向けられる。一方で、保健福祉に詳しい和歌山大学の本山貢教授は「不足分の穴埋めまでは難しい」とみる。

 ビザ新設により、人手不足がどこまでカバーされるのか、注目される。

写真=高齢者と和やかに話すベトナムからの留学生

(ニュース和歌山/2017年9月2日更新)