地域で設置が進む防犯カメラ。2000年代初頭から商店街や自治会が取り組み、犯罪防止や検挙に効果を上げている。09年に和歌山県警が繁華街を中心に設置を始め、昨年は和歌山県が市町村に、和歌山市が自治会に設置補助を開始。県内では官民合わせ、すでに街頭で500台以上が稼働しているとみられる。県は「犯罪が起こりにくい環境をさらに整備するため、1000台を目標に進める」と意気込むが、台数が増えれば映像流出の危険が増し、適切な管理の課題が残る。

 

抑止、検挙に成果


 防犯カメラが増え出したのは、年間の刑法犯罪が2万4273件と過去最高を記録した2001年ごろから。和歌山市西庄の西脇グリーン団地は03年、自転車盗難対策としてカメラを据えると被害が激減した。平田恒和自治会長は「以来10数年、被害はほとんどなく、盗られてもすぐに分かる」と話す。

 壁やシャッターへの落書きに頭を悩ませていたぶらくり丁も、05年に取り付けてからは大きく書かれることはなくなった。導入を提案した番茶屋の木村圭一さんは「落書きのような計画的犯行には抑止力が働くのでしょう」。映像から当て逃げが分かったこともあり、「安全対策に欠かせない」ときっぱり。

 設置は民間が先行したが、県警も09年から7年間で和歌山市や岩出市、田辺市の繁華街、駅に95台を設置した。15年2月に紀の川市で少年が殺害されたことを背景に、県が昨年、市町村に補助を始めると、幼稚園や小学校、駅などへ97台、和歌山市も自治会への補助で11台と、わずか1年間に100台以上が取り付けられた。

 カメラは検挙にも成果を上げる。昨年、刑事事件での検挙中、5%はカメラ映像がきっかけ。和歌山市の湊地区は昨年3月、10ヵ所に設置したところ、1年間に9回、警察に映像を提供、2件が検挙に結びついた。

映像適正管理が課題

 一方、課題となるのが映像の管理。昨年、県が「特定の家や人物を映さない」「管理責任者を定める」といったガイドラインを定め、適正管理を呼びかける。各自治会や商店街で「どこが映るのか」「だれが見るのか」と協議するが、調整がつかず設置を見送る例もある。

 また、不特定多数を撮影することを疑問視する声も挙がる。和歌山弁護士会の畑純一会長は「映像をみだりに撮影されない権利は人格権に由来する肖像権として保護される。肖像権侵害と、犯罪抑止という公的利益との関係で、場合によっては受忍限度(※)を超えて違法になる可能性がある」と説明する。

 防犯カメラの映像を無断で流すサイトの存在も見逃せない。民間が設置するカメラには、インターネットや無線でデータを送るものがある。和歌山大学学術情報センターの川橋裕講師は「機器の設定を適切にしなければ、映像を第三者に盗み見される危険性がある」と指摘する。
 世界ではテロが多発し、個人のプライバシーより安全が優先される傾向が強くなっている。しかし、防犯カメラについて、現状では法律に明確な規定はない。畑会長は「監視が進みすぎると、プライバシーがないがしろにされる。例えば、道路や公園のような公共の場所では、犯罪多発地帯であることや、防犯カメラで犯罪予防効果が期待できること、行政が設置する場合は第三者機関によるチェックを受けることなど、きちんとした法整備が必要だ」と提言している。

(※)受忍限度=社会通念上、我慢(受忍)できるとされる被害の範囲

写真上=中之島連絡所前には信号上部に丸型の防犯カメラ、同下=アロチの街頭を常時監視

(ニュース和歌山より。2017年4月15日更新)