農家の減少と高齢化が進む中、20代の青年農業者たちが元気だ。紀の川市のグリーン・ジャンクションと和歌山市のファニー・ファーマーズ・プロジェクト。和歌山県内の農業従事者がこの40年で7万5000人から3万6000人と激減し、60歳以上が約7割を占める現状を受け、共に新規就農者を増やし、独自の手法で農業の未来を切り拓こうと情熱を注ぐ。
次世代育成 更生支援も
紀の川市にある龍門山のふもと、荒見地区で東京ドーム約2個分の畑を管理する若手農業者集団グリーン・ジャンクション。農産物の生産、加工、販売をまとめて行う農業の6次産業化に加え、非行やひきこもりなど心に課題を抱える若者を受け入れ、次世代を育てる活動に取り組む。田村享也(たかや)代表(26)は「中学のころにやんちゃした経験があるので、社会からレッテルをはられた若者の気持ちがよくわかる。仲間を増やし、農業を他の業種に負けない産業にしたい」と意気込む。
田村さんが農業を始めたのは中学卒業後。農家でアルバイトをしていた時、「自分で販路を開拓できれば、農家の収入を上げられるのでは」と考え、20歳で独立した。
独立1年目から収穫した作物を軽トラックに積み、和歌山市の飲食店に売り込んで約80件の契約をとった。経営が軌道に乗り始めたころ、周囲の農家から「高齢で作業ができなくなってきたので、土地を管理してほしい」との相談を受け、中学時代の仲間ら5人と一昨年にグリーン・ジャンクションを立ち上げた。
玉ねぎ、きゅうり、トマト、みかん、はっさくなどを生産。いずれも無農薬で「味が良い」と評判が良く、150の飲食店やスーパー、個人に届けている。保護観察所の紹介で、更生中の若者を雇うこともあり、「自然は荒れた心をいやしてくれます」と田村さん。
メンバーで定時制高校に通う山本凌哉さん(19)は「一度高校を退学し、このままじゃダメだと思っていたところで田村さんに出会った。何をやっても続かなかった僕が今、夢中になれているのは農業です」と笑顔を見せる。
8月に農業法人化し、将来は海外進出を目指す。田村代表は「人間が生きていく上で欠かせない食を支える農業は重要。将来は海外に農業学校をつくり、日本の優れた農業技術を伝えたい」と目を輝かせている。
写真 このページ上=「食を支える農業を盛り上げたい」と田村さん
動画で新規就農サポート
一方、20代の青年農業者4人でつくるファニー・ファーマーズ・プロジェクトは今年3月に結成。新世代の農業者を増やすため、農作業の方法を一から紹介する動画の作成に取り組んでいる。代表の岩崎淳平さん(29)は「就農を支援し、農家のネットワークを作りたい。天災などで不作だった地域の農家を支援するなど助け合いの輪を広げ、農家の収入安定につなげる」と描く。
東日本大震災を機に福島から和歌山へ避難した岩崎さん。今春まで農業法人で働いた経験を生かし、そこで出会った仲間と会を立ち上げた。目指すのは「農業をかっこよく、楽しく」することと、収入の安定化だ。
目をつけたのはインターネット上に公開できる動画。自分たちが就農した際、専門書などを読んだが難しく、農業の敷居の高さを感じたことから、冗談を交えながら楽しく見られる解説動画を作ろうと考えた。
動画は、農作業を始める際に必要な道具、服装といった初歩的な内容から、草刈りのペース、作物の手入れ、収穫までを収録。メンバーが作業の意味や注意点を解説しながら実演し、和歌山市祢宜の畑でかんきつ類や野菜を育てながら撮影を進めている(写真)。
動画は秋以降、インターネットで公開予定。岩崎さんは「季節や作物の育つ過程で作業が異なる。1年間撮りため、土地や販路の探し方も紹介したい」と話している。
同会(ffpwakayama@gmail.com)。
(ニュース和歌山2015年6月13日号掲載)