1月7日㊐から放送されるNHK大河ドラマ『光る君へ』。主人公は1000年の時を超え、今なお親しまれる『源氏物語』の作者・紫式部です。ただ、源氏物語も紫式部も、名前は知っていても「どんな内容か」「どんな人物なのか」分からない人も多いのでは? 源氏物語に詳しい近畿大学附属和歌山高校の金田圭弘教諭に聞きました。

作品には何が書かれてる?

   『紫式部日記』に描かれた紫式部(右)

 源氏物語は、平安時代中期に書かれた長編小説で、作者の紫式部が生涯で唯一残した物語です。「主人公、光源氏の一生が、大きく分けて3部構成で描かれています」。1部は、光源氏出生前から始まり、文武両道、端正な顔立ちからプレイボーイだった一面や、栄華を極めるまで。2部は、女性問題で失脚し、一度は地獄を見るが、明石の住吉大社で神に祈りを捧げたのを期に盛り返し、絶大な権力を手に入れるも、老いていく体に苦悩するまで。3部は、源氏の没後、息子の薫を中心とした恋物語が題材で、人の悲しみや絶望をつづっています。

 「1000年以上昔の物語なので、身分の違いなどは難しく感じるかもしれませんが、実は人間関係や老化など、我々現代人と似たような悩みをもっていたんだと考えると、親しみがわきます」

光源氏のモデルといわれる道長

 ただ、光源氏という人物は実在しておらず、当時の最高官僚だった藤原道長がモデルとの説や、紫式部の想像から生まれた人物という説などがあります。

作者・紫式部はどんな人物?

 作者である紫式部はどんな人物だったのでしょう。「実は〝紫式部〟とは、今で言うペンネーム。本名はわかっていません。また、生年月日も定かではありません」。名前の由来は、「源氏物語のヒロイン、紫の上と、紫式部の父親、藤原為時が式部丞(しきぶじょう)という役職だったため、それらを合わせたのではないかと言われています」

 父が漢文学者であったためか、式部は家にある歌集や歴史書を読み尽くすほど本好きで、豊富な知識を持っていました。

 光源氏の恋愛模様を描いた源氏物語は、式部が働いていた宮中でも話題になりました。「印刷機ができる前ですから、回し読みしたり、書き写したりする人が大勢いたようです。ただ、現在、原本は存在していません」

     源氏物語の複製品

 また、当時の一条天皇は、源氏物語の文面から、「作者は歴史と漢文に非常に詳しい。特に日本書紀をよく読んでいる」と感心しています。この話が耳に入ったのか、自身の日常をつづった『紫式部日記』に、同僚から「〝日本紀の御局(にほんぎのみつぼね)〟とあだ名をつけられた」という記述があります。当時、女性が漢文を使う機会はほとんどなく、この名前には「式部にはたいそうな教養がある」という嫉妬が含まれており、本人は苦痛だったようです。

 「大河ドラマがどこまで歴史に沿って描かれるのか、ひも解きながら見ると、より一層楽しめます」とアドバイスをくれました。

小説・マンガ・映画…お好きな方法で

金田圭弘さん

近畿大学附属和歌山高校で国語科を担当。同校図書館長も務める。年1度、和歌山市和歌浦南の万葉館で源氏物語に関して講演しており、光源氏以外の登場人物に焦点を当てて分析したり、作中の人間関係をまとめた系図を作ったりして、毎回異なる視点から解説する。

 「源氏物語はこれまで、何度も現代語訳され、小説やマンガ、映画など、いろんな形で世に出されています。好きな方法で作品に触れてくださいね」

(ニュース和歌山/2024年1月3日更新)