環境負荷低減へ貢献目指す
ニットの編み模様による微妙な収縮状態まで再現可能な3Dシミュレーターを考案した和歌山市坂田の島精機製作所開発本部の寺井公一統括マスターが、今年度の発明協会会長賞に輝いた。本社を県内に置く企業では初の快挙。リアルな3D画像により、衣服の試作を減らすことができ、また、無駄な作業の省略は製品化までの期間短縮につながる。寺井さんは「環境負荷を低減できるシステムで、地球に優しい」と力を込めている。
アパレル業界では、新製品を出す際、デザイナーのスケッチを元に実物を試作するのが常。色や形の異なる試作品を作った上、OKがでるまで編み目の大きさや色の配置などの修正を繰り返す。しかも、製品化されるのは試作のうち3〜5%程度しかなく、残りはすべて廃棄されてきた。
寺井さんは「本物と見まがうような3D画像ができれば、試作そのものを少なくでき、製品化までの期間短縮も可能」と、2000年代初めから開発に取り組んだ。
元になる技術を発明し05年に特許を出願。製品化に向け、処理速度の高速化と、実際に着用した時のニットの伸び縮み具合で見た目が変わる点をどう3D画像で再現するかに取り組んだ。課題を一つずつ克服し、11年にはこのソフトを組み入れデザインシステムの販売にこぎつけた。
しかし、発売当時は業界として大量生産、大量廃棄が一般的で、反響は芳しくなかった。それでも、海外企業から徐々に注文が入り、SDGsやカーボンニュートラルへの関心が世界的に高まってきた5〜6年前から注目を浴びてきた。
システム導入により寺井さんは、「製品化までの期間を、ざっと3分の1にできる。発売直前まで流行の動向を見ることで、売れ残りを減らせる。初期の無駄な仕事の削減も可能」と説明する。
受賞をきっかけに、「他にも開発して、さらに上の賞をねらいたい。また、和歌山の企業でこれほどの賞を取れると広まり、『地元で開発したい』と思う人が1人でも多く出てほしい」と願っている。
(ニュース和歌山/2024年9月7日更新)