ベランダが特徴の洋館など 10棟
洋風の外観が特徴的な和歌山市今福の郭家住宅が8月15日、国の重要文化財に指定された。和風建築に西欧技術を取り入れた擬洋風と呼ばれる洋館をはじめ、10棟が対象。国内に残る擬洋風建築の最古級で、同様の建物では和歌山初の重要文化財となる。保存に力を入れる郭家住宅の会、西山修司代表は「戦災や時代の変化を乗り越えてきた。その価値が改めて認められました」と喜んだ。
郭家は清朝の侍医で、1650年代に長崎に渡ってきた。3代目で和歌山に移り、4〜7代目は紀州藩の藩医を務めた。7代目の百輔氏が1877年、今福の自宅に洋館を建て、郭医院を開業。8代目が亡くなる1928年まで続いた。
洋館は木造2階建てで、イギリスなどが蒸し暑い東南アジアやインドに進出する際に考案したコロニアル様式の玄関ポーチと2階ベランダが特徴。また、開き戸上部にしつらえた半円形の窓が洋風の雰囲気を醸し出す。隣接の診察棟も同年築だが、こちらは純和風。さらに、数寄屋の座敷、離れ、米蔵、土蔵、風呂、外便所、表門、石塀なども残されている。
住宅は百輔氏の子孫が所有し、97年に有形文化財に登録されたが、老朽化が進み維持管理が課題となっていた。貴重な建物を残そうと西山さんは2016年、百輔氏が残していた建築にかかわる文書の一部を解明。翌17年に会を立ち上げ、保存を求めて20年、7500筆の請願署名を同市に提出していた。
西山さんは「重要文化財指定の意味と価値を広め、地域で活用し、歴史を生かした魅力あるまちづくりにつなげていきたい」と意気込んでいる。
9月8日㊐午前10時〜午後3時、月例の一般公開。10月13日㊐は今福連絡所で重要文化財指定の報告会。西山さん(090・1983・1366)。
(ニュース和歌山/2024年9月7日更新)