切目中山王子(印南町)は、切目川を渡り島田から山道を登った榎木峠付近にありました。同王子は、明治四一(一九〇八)年、島田にあった小祠を合祀して、中山王子神社となりましたが、もとはその東側の王子谷にあったといいます。

 絵は、江戸時代後期の岩代の結び松付近をえがいた風景です。万葉集にでてくる「岩代の岸の松」の地形は急峻な段丘崖とその上の海岸段丘面(標高35㍍余)にあたり、現在、そこには国道42号沿いに「有間皇子結び松」の大きな記念碑が建っています。それは、同皇子が謀反の嫌疑で捕えられ、護送の途中、松の枝と枝を結んで行路の無事を祈ったことに由来します。この辺りは眺望がよく、南部湾から田辺湾まで絶景が見渡せます。

 岩代王子(南部町西岩代)は、東岩代川と西岩代川の両河口の間に位置し、海に面しています。同王子は明治四一年、西岩代の八幡神社に合祀されましたが、跡地には社殿が再建されています。そこは、JR岩代駅西側の海岸ですが、警報器や遮断機のない踏切を渡ります。線路の横断にはくれぐれも気をつけて下さい。

画=岩瀬広隆、彩色=芝田浩子

(関西大学非常勤講師 額田雅裕)

(ニュース和歌山/2024年10月12日更新)