料理の腕、指導力が評価
調理師として、また、指導者として功績があった人を顕彰する厚生労働大臣表彰に昨年11月、和歌山市湊通丁北のホテルアバローム紀の国の津田忠昭総料理長が選ばれた。調理関係では全国から70人選出され、県からは津田さんだけ。「自分の料理だけでなく、人材育成が評価されて光栄。今後もさらに学びを深め、技を伝えていきたい」と熱を込めている。
和食の伝統探究
父も祖母も調理師として働く家庭で育ち、1993年からホテルの前身である紀の国会館に和食調理員として勤務。1日でも早く仕事を任せてもらえるよう、魚をおろす速さや野菜の飾り切りの出来など、包丁技術修得に重きをおいた。
また、代々の料理長たちから受け継いできた日本料理の繊細さを表現するため、魚を切る際の包丁の角度や、時間をかけて行う下ごしらえなどをおろそかにしない形を追い求めている。
料理は、雑賀崎を中心とする地元の豊富な魚介に、紀州特産の熊野牛、さらに、野菜や調味料をベースに生み出す地域感あふれる味が自慢。舌の肥えた客をうならせ、2005年にホテルの割烹六つ葵料理長に、21年にはホテルの総料理長に就任した。
培った〝技〟伝授
理想の食を目指す心を常に持ち、月1、2回、和洋中はじめ多彩なオーナーシェフが集う勉強会に参加し、調理を通して互いの技術や食材に関する情報を交換している。「異なるジャンルの料理人から新たな発見があり、和食に生かせると思えば、すぐに取り入れます」とあくなき探究心が顔をのぞかせる。
もちろん伝統の和食調理にとどまらず、自ら取り組んだ新たな料理や調理法、さらには、市場での目利きに、調理道具の選び方や使い方まで、培った〝技〟は惜しみなく後輩に伝授している。これまで指導した調理師は20~30人にもなり、県内外で活躍を続けるほどだ。
このほか、指導は後輩だけにとどまらない。今年2月には、同市山東中の東山東小学校で、食育授業として地産地消をテーマに一緒に調理をしようと考えている。「食を通して、子どもたちに地元食材の素晴らしさを知ってほしい」との思いがあるからだ。
調理師となり30年以上。「より美味しく安心安全の食をいつまでも楽しんでもらうため、これからも日本食の〝技〟をしっかり伝え、次世代を担う料理人を育てます」と目を輝かせている。
(ニュース和歌山/2025年1月11日更新)