太地町で毎年11月に開かれるくじら祭です。何世紀にもわたり受け継がれてきた古式捕鯨が後ろに描かれています。海の青い色から生命力や若々しさを感じます。日本の縄文時代のころ、地球上ではどこも似たような方法で捕鯨が行われていました。太地町では江戸時代に和田角右衛門がクモの巣のような網で鯨を囲い込んで捕まえる網取り式捕鯨を考案しました。古式捕鯨のキーになった技術は、高速で走る細長い木造の勢子舟でした。スピードを出すため、舟底に漆が塗られ、8人の男性が櫓(ろ)で力一杯こぎました。その速さはかつて木造の舟では世界最速で、西洋の舟や蒸気船を抜くほどだったと語り継がれています。鯨が捕れると太鼓をたたき、感謝の祭を行い、敬意を示していました。古式捕鯨は19世紀の工業化の時代、海の資源は永久に存在すると考え、乱獲を進めた西洋諸国の台頭により、姿を消してしまいました。
※ニュース和歌山本紙、第2・4水曜号掲載。次回は10月14日号です。
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サイモン・ワーン(Simon Wearne)
オーストラリア出身の写真家、映像ジャーナリスト。2008年に来日し、和歌山大学観光学部の特任助教を務めるかたわら、太地町の捕鯨文化をユネスコの産業遺産に登録するため、文化財の独自研究と調査を進めている。
(ニュース和歌山2015年9月9日号掲載)