地元和歌浦の景色を描き続ける和歌山市三葛の洋画家、中尾安希さんが描写した紀三井寺が絵はがきになった。その原画展が同寺本堂で10月31日(土)まで開かれている。中尾さんは「見慣れてしまうと忘れてしまいがちですが、ここからはいにしえの万葉歌を偲ばせる和歌浦を一望できます。このすばらしい寺を絵はがきで紹介したい」と語る。
紀三井寺近くで生まれ育った中尾さんは、幼いころから壊れたままになっていた石灯ろうが気になっていた。紀の国わかやま国体が開催されると、紀三井寺公園陸上競技場にほど近い同寺には選手や関係者らの参拝が増えると予想されることから、寄付を呼びかけ、自らの作品を販売して約125万円を集め、6月に石灯ろう6基を修復した。
その後、前田泰道副住職から、「寺の絵はがきがないので作りたい」と相談を受け、これまで描いた淡彩画から7点を提供した。これを元に寺が作成した絵はがきは、桜が美しい時期の本堂や紅葉の季節の多宝塔など7枚。境内から望む夕景には山部赤人の「若の浦に潮満ち来れば潟を無み葦辺をさして鶴鳴き渡る」、楼門には松尾芭蕉の「見上ぐれば桜しまふて紀三井寺」の歌や句を添えた。
前田副住職は「『万葉の景色を一幅の絵を見るよう眺められる紀三井寺の眺望は、日本三景にも勝る』と常々おっしゃる中尾さんの感動が軽やかな淡彩画に込もっています」と喜ぶ。
7枚組600円。同寺本堂と宮脇書店ロイネット店で販売中で、10月からは万葉館でも取り扱い。中尾さん(073・445・2756)。
(ニュース和歌山2015年9月26日号掲載)