Q. 55歳男性。健診で高血圧と尿蛋白を指摘されました。

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  ◆循環器内科 みなかたクリニック 南方常夫院長

 

A. 慢性腎臓病(CKD)のようですね。日本の成人の約8人に1人が罹患していると言われています。これは腎障害(蛋白尿・血尿)や腎機能障害が持続する状態で、主な原因は高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満メタボリックシンドローム、慢性糸球体腎炎、加齢などです。

 病気が進行すると、末期腎不全による透析導入が必要になりますが、蛋白尿を認めるだけで心筋梗塞や脳卒中の危険性が高まり、また、蛋白尿そのものが腎臓の組織に障害を与え、腎機能を低下させることが分かってきました。

 ごくわずかな蛋白尿を見つけるためには、微量アルブミン検査(尿中クレアチニン同時測定)などを行います。蛋白尿と高血圧は、すべての腎臓病に共通する病気を進行させる原因です。高血圧が腎臓の細い血管を障害し、蛋白尿を増やし、さらに尿蛋白が腎臓病を悪化させることで高血圧が悪化するという悪循環を来します。

 近年、CKD合併高血圧は、夜間血圧変動パターンに異常を認めることが多いと考えられ、降圧効果だけでなく、血圧変動を考慮した治療、すなわち降圧の「質」を考えた治療が求められています。加えて、減塩、肥満の改善、糖尿病、脂質異常の治療、禁煙等の生活習慣の見直しが必要です。

Q. 脱腸の治療(手術)は、どのような手順で進むのでしょうか。

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  ◆外科 楽クリニック 藤田定則院長

 

A. 当院では、常用薬や最近受けた血液検査の結果があればそれらを持参の上、受診して頂いています。診察は立ったり寝たりした状態で行われ、必要に応じ、超音波検査を実施します。脱腸(そけいヘルニア)の診断がつけば、現状の説明を受けます。治療(手術)が決定すると、術前検査として、胸部レントゲン、心電図、血液検査を受けます。その結果を元に、手術方法や麻酔方法が決まります。
 手術当日の朝は軽く食事をとり、常用薬(血液をサラサラにする薬なども)があれば、いつも通り服用します。
 来院後、手術前の体調を確認し、着替えを行い、手術の準備に向かいます。
 2015112810_raku 点滴で麻酔薬が投与され、投与後、すぐに眠りに入ります。その後1時間ほどの手術を受け、終わり次第目覚めます。目が覚めたら自分で歩いて観察室に向かい、そこでさらに1時間ほど休んで、痛みや気分不良が無ければ帰宅となります。
 食事は夕食から普段通りでOK。入浴も翌日から可能です。

Q. アレルギー性鼻炎や花粉症と、あごのずれは関係がありますか?

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  ◆歯科 吉村歯科医院 吉村義孝院長

 

A. かみ合わせは、①歯とあごの形 ②あごの位置 ③あごの運動、の3つに分類されます。その中で、②の「あごの位置」を良い位置に是正すると、かみ合わせがよくなるだけでなく、首や肩のこりといったからだの不調から、うつに代表される心の問題まで、様々な不定愁訴が軽減されると言われています。これは、かみ合わせが脳の働きに大きな影響を及ぼしていることを示しています。
 近年、社会的な問題となっているのがアレルギー性鼻炎や花粉症です。カゼをひいているわけでもないのに、くしゃみや鼻水、鼻づまりが発作のように起こります。これら免疫系の症状も、あごのずれを治すことで改善していくようです。
 あごのずれを治すと脳が活性化され、免疫力が向上するという研究結果があります。咬合医療(こうごういりょう=かみ合わせの治療)を行うと、筋の緊張がゆるみ、圧迫されていた血管に血液がスムーズに流れ、脳が活性化します。脳の重要な機能のひとつに免疫機能がありますが、咬合医療によって免疫力が高まるため、免疫疾患であるアレルギー性鼻炎や花粉症に効果があると考えられています。花粉症等でお悩みの方は、一度、あごのずれを確認してみてはいかがでしょうか。

Q. インフルエンザの予防接種は、効果があるのでしょうか?

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  ◆内科 淀澤医院 淀澤進院長

 

A. インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することにより発症する疾患で、高熱を伴った風邪症状を引き起こします。高齢者や免疫力が低下した人だと気管支炎や肺炎を併発しやすく、子どもではまれに急性脳症を発症します。
 主な感染経路は、咳やくしゃみなどによる飛沫感染です。強い感染力があるため、いったん流行すると短期間で広がります。日本では毎年12月〜3月頃に流行しますが、近年は夏でも発症例が見られます。
 インフルエンザは、発熱後12時間程度で、医療機関において簡易キットによる診断が可能です。治療は、48時間以内に抗ウイルス剤を投与するのが主流となっています。
 予防に効果が期待できるのは、ワクチンの接種です。流行前に受けておくと感染の可能性が抑えられ、感染しても重症化を防止する効果があります。
 インフルエンザは、A型とB型に大きく分類されますが、その中にも多様な種類があり、さらに、どんどん形を変えていくというやっかいな性質があります。従来、ワクチンはA型2種類、B型1種類の3価でしたが、今年からA型2種類、B型2種類の4価ワクチンに強化されました。予防効果の増強に役立つと考えられています。

Q. 右下腹部が腫れてきました。徐々に大きくなっています。
 65歳男性です。最近、右足の付け根が腫れてきました。立ち上がったり、物を持ち上げたりしたときにポコッと出てきます。以前より、だんだん大きくなってきている気がします。このまま放っておいてもいいですか? 治療が必要なら、薬を飲むだけで治りますか?
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◆消化器外科・消化器内科 福外科病院 日本外科学会認定専門医 日本大腸肛門病学会認定専門医 福昭人院長

 

A. 「そけいヘルニア(脱腸)」のようですね。これは、乳幼児でない限り、自然治癒することはありません。年間約18万人が新規に発症し、その8割は40歳以上の男性です。
 そけいヘルニアは、加齢とともに下腹部から足の付け根(そけい部)の筋肉組織が弱くなり、その部分からお腹を覆う腹膜が袋状に飛び出す病気です。放置しておくと腫れが急に硬く痛くなり、指で押さえても戻らない「嵌頓(かんとん)」の状態になると、緊急手術になります。
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手術は切開法と腹腔鏡法
 薬で治すことはできず、治療は手術となります。腫れている部分の根元を結紮し、ポリプロリン製のメッシュ(医療用の布)で傷に緊張がかからないよう補強します。メッシュも改良が進み、より柔らかく違和感の少ないソフトメッシュが開発されています。
 手術の方法は、①病変部を4㎝ほど切開する「切開法」  ②お腹を3カ所1㎝ほど切開し、腹腔鏡という内視鏡を入れ、お腹の中でヘルニアを治療する「腹腔鏡法」があります。※創部(キズ)は左図参照
 いずれも手術当日入院し、夕食後に退院する日帰り手術が原則ですが、
 ①陰のうまで腫れている方 
 ②痛みに強くない方
 ③抗凝固剤を内服している方
 ④高齢で一人暮らしの方
などは、2日間入院(手術の翌日に退院)が望ましいことがあります。
 なかでも高齢者は、基礎疾患があることが多く、かかりつけ医と連携を取りながら、手術前に全身状態を診る必要があります。
 創部の痛みは腹腔鏡の方が少ないと言われますが、術式の選択基準がありますので外科専門医にご相談ください。外科専門医は日本外科学会のホームページで検索できます。

Q. 腰痛に悩んでいます。マッサージしても治りません。
84歳女性です。立ち座りする際や、立ち仕事をすると腰が痛くなります。マッサージをしてもらうとその時は楽になるのですが、何日か経つとまた痛くなってきます。腰痛をきちんと治す方法はありませんか?

 

◆リハビリテーション科 今村病院 理学療法士 清水萌先生

 

A. 腰痛症は、「約8割の人が生涯に一度は発症する」といわれるくらい大変身近な病気です。症状は、その名の通り、腰部の痛みです。しかし腰痛を生じさせる原因は様々で、鑑別や治療が難しいのが特徴です。ご質問者様の場合、マッサージをすると楽になるということですので、腰痛のなかで一番多い「筋・筋膜性腰痛」と考えられます。
 筋・筋膜性腰痛とは、不良な姿勢や、腰部に負担がかかる体の使い方により、腰部の筋肉が疲労し、痛みを感じる腰痛です。不良な姿勢とは、いわゆる「猫背」や「反り腰」等のことで、これらの姿勢を持続的にとることで腰痛が発症します。

 

筋力の低下が不良な姿勢招く
 猫背や反り腰等の不良な姿勢になる主な原因に、足部や股関節部など腰部以外の関節の機能障害が挙げられます。機能障害は筋力低下等が元となって起こり、それが体の歪みを招いて不良な姿勢につながります。また、腰部とともに体を支える体幹の筋力が低下すると、不良な姿勢になるといわれています。
 一方、姿勢からの影響だけでなく、体の使い方から腰痛を発症する場合もあります。ご質問にある「立ち座りの際」や「立ち仕事」で腰が痛くなっているのは、腰部に対して負担がかかる体の使い方を反復して行っていることが原因と考えられます。

 

腰痛を引き起こす原因に対して治療
 腰痛の治療は、原因を見つけだし、その原因に対して治療を行うことが肝要です。もちろん、疲労している腰部の筋肉に対する治療は大切ですが、足部や股関節部といった腰部以外の関節の機能障害による体の歪みに問題がある場合には、「体の歪み」を引き起こしている原因に対して治療しなければなりません。また、腹部の筋肉の筋力低下が問題であるならば、筋肉を使えるよう、筋力強化をしなければなりません。さらに、間違った体の使い方をしているなら、上手に体を使えるように修正していかないと、腰痛治療には遠回りとなるでしょう。
 単に腰部の筋肉をマッサージしているだけでは、一時的に楽になっても再び腰痛を発症し、その場限りの対処療法になるおそれがあります。つまり、根本的な原因に対して治療していかなければ、腰痛症は治りにくいのです。
 このように、腰痛には様々な種類があり、原因も個々に変わってくるため、治療法もそれぞれ異なります。腰痛に悩まれている方は、一度、専門医に相談されてみてはいかがでしょうか。

(ニュース和歌山2015年11月28日号掲載)