9月と10月、イングランドで開かれたラグビーのワールドカップ(W杯)。日本代表は予選突破こそならなかったものの、2度の優勝経験を持つ強豪、南アフリカを含む3ヵ国に勝利を収め、五郎丸歩選手がキックする前に行うポーズがブームになるなど、大きな注目を集めた。その効果か、県内でもラグビースクールに入る子どもたちが増えている。
「パス! パス!」「もう1点行こう!」。12月6日、緑の芝がまぶしい紀三井寺公園球技場では、だ円形のボールをつなぐ子どもたちの元気な声が響いた。
和歌山県内の子ども向けスクールは和歌山、岩出、有田、田辺で活動する梅干しジュニアクラブの4つ。このうち、42人が所属し、紀三井寺公園や市民スポーツ広場で練習する和歌山スクールは46年の歴史を持つ。毎年、開校式を行う4月に入会する子どもがほとんどだが、「W杯の影響か、今年は10月以降に6人が体験入校した。年度途中でこんなに入ってくるのは初めて」と榎本豊校長は目を細める。
小2の岡田凌弥くんと幼稚園年長の侑士(ゆうと)くんはこの日が2回目の参加。ラグビー経験がある父、裕介さんの影響だ。裕介さんは「いつかさせたいと思っていましたが、五郎丸選手の活躍におしりをたたかれて通い始めました。前回、ボールを借りて帰り、家でも3人でパスの練習をしていました」と笑顔。
小4の渡瀬嵩伸介(たかのすけ)くんは11月から有田スクールに通い始めた。「みんなでパスをつないでトライできたときが楽しい。これからも続けたい」と目を輝かせる。
和歌山スクールに通って7年目、田中悠功(はるく)くん(小6)はW杯で活躍する日本代表選手をテレビの前で応援した。「体の大きな外国の選手に向かっていく勇気がすごいと思いました。その影響で仲間が増えてうれしい。将来はW杯に出て、決勝トーナメントまで行きたい」と夢を描く。
岩出スクールもW杯後、5人が新たに加わり、計75人に。梅田卓代表は「W杯は保護者の方にラグビーを身近に感じてもらう機会に、子どもたちにとっても今までは『高校で花園に行きたい』だった目標が、『日本代表になりたい』『W杯に出たい』と大きく変わるきっかけになった。世界がぐっと近づいた」とW杯効果を語る。
和歌山スクールの榎本校長は「ラグビーは縁の下の力持ち的なプレーがあってこそボールがつながり、トライが決まる。そんな自己犠牲の精神を子どもたちに養ってもらえたら」と願う。
問い合わせ先は、和歌山ラグビースクール(073・444・7998)▽岩出ラグビースクール(0736・62・5864、午後8〜10時)。
写真=ゲーム形式の練習に汗を流す子どもたち
(ニュース和歌山2015年12月12日号掲載)