ニュース和歌山は県内の妖怪を紹介する「妖怪大図鑑」を1月から第2、4土曜号で連載。これに先駆け、今回は2つを取り上げると共に、絵・解説を担当する漫画家のマエオカテツヤさんに話を聞いた。
其の壱 カシャンボ
怖さ:1 山の妖怪 出没地域:紀南一帯
和歌山を代表する妖怪の一つ。頭は芥子坊主に似て、6~7歳くらいの子どもの姿をしている。川で暮らす河童が山へ入るとカシャンボになるといわれる。東牟婁郡高田村(現・新宮市)のある家では毎年、新宮川を遡って来た河童が家に小石を投げ込んで知らせ、山へ入ってカシャンボになるという。その際、戸口に灰をまいておくと、水鳥のような足跡を残すらしい。河童と同じくいたずら好きのようで、牛につばをかけたり、つないでおいた馬を隠したりするが、カシャンボ自体は人のつばを嫌うらしい。なんともわがままだが、憎めないヤツだ。
其の弐 シイ
怖さ:3 山の妖怪 出没地域:有田郡など
体中に棘のような毛を持ち、怒るとその毛を逆立てて威嚇するんだそうだ。なんだか動物のヤマアラシを連想させるが、有田郡廣村(現・広川町)では「やまあらし」ともいって、毛を逆立てる姿を牛が恐れるので、飼う者は牛を前進させる際に「後ろにシイがいるぞ」という意味で「シイシイ」と命令するという話が残る。この話だけだと、「それってホントに動物のやまあらしなんじゃないの?」と思うかもしれないが、このシイは牛や馬にとり憑いては食い殺すとも、人間はふれただけで顔、手足、喉まで傷つけられるともいわれるこわ~い妖怪なのだ。
きっかけは水木しげる
──妖怪への関心は。
「幼いころは怖がりで、お化けとか大嫌いでした。ある時、水木しげるさんの妖怪事典をおそるおそる開いたところ……、多種多様な妖怪に魅了されてしまいました。大人になった今も『妖怪とはなんぞや?』と関心を抱き続けています」
──実際に会ったことは………?
「1998年、大阪から和歌山に戻って来た時、蔵や離れもあるぐらい広い旧家をアトリエに借りました。仕事をしていると、何やら窓の向こうに視線を感じる。見ると一匹の猫。よく来てはじっとこちらを見て、しゃべりかけてくる、そんな感覚になるんです。その猫が興味深そうにしていた時の漫画は読者の反応が良く、自信がつく。不思議な体験です」
──和歌山には多くの妖怪に関する伝承が残っています。
「かの南方熊楠もダル(熊野の山中で空腹の旅人にとりつく妖怪)につかれたそうで、妖怪への関心が深かったと聞きます。今回の連載では私が妖怪の世界に皆さんをご案内させていただきます」
マエオカテツヤ…1967年、和歌山市生まれ。漫画家のかたわら、桂枝曾丸の創作落語制作、テレビ和歌山「ちゃぶ台」出演など多彩に活躍。
(ニュース和歌山2016年1月3日号掲載)