御坊市と日高郡で日刊紙を発行する日高新報社は、戦争体験者らの証言をまとめた書籍『その日がくる前に~それぞれの戦争を訪ねて』を2015年12月に出版した(写真)。津村周常務は「『その日』とは戦争経験者がいなくなる日を指します。体験談を直接聞くことができる機会が減る中で遠い過去の歴史ではなく、身近にある地元の歴史として認識し、平和を考えるきっかけにしてほしい」と願う。
太平洋戦争開戦から70年の2011年から昨年まで、終戦の日がある8月と開戦した12月に、日高地方で暮らす戦争経験者やその家族の証言を連載。今回、戦後70年の節目に、それらの記事を追加取材し、新たな内容も盛り込んでまとめた。
1~5章は、戦地で負傷した将兵の治療に当たった看護師の経験、南方戦線での飢えや病との戦い、御坊に疎開した山本五十六連合艦隊司令長官の家族とのふれあいなどの体験談に当時の写真を添えた。6章は由良にあった人間魚雷「回天」の基地、御坊市の金物屋に残る防空壕、龍神村に墜落した爆撃機B29搭乗員の慰霊祭といった戦争遺産を紹介。7章は印南町で長年続く中学校での平和学習や、中国を訪れた高校生の声を掲載した。
津村常務は「『思い出したくない』と5年前の取材で断られた人も、戦後70年の節目に協力してくれました。二度とあんな悲劇を起こしてはならないとの気持ちが詰まっています」と話している。
1800円。四六判変形、566㌻。ガーデンパーク、宮脇書店和歌山店で販売。日高新報社(0738・24・0077)。
(ニュース和歌山2016年1月13日号掲載)