日記をつけ始めた。ああ、よくある新年の思いつきねと言うなかれ。こちらは18歳から26歳まで日記をつけたプロ(?)である▼浪人生時代、毎日が漫然と過ぎることに恐怖を覚え、日々を記録し始めたのがきっかけだった。備忘録程度ながら、家族や友人と交わした会話、世間の事件、心に留まった風景、食べ物まで、いつか振り返った時にその時を思い起こせるように意図していた▼それらを開き、面白いのは記憶に残る出来事ではなく、全く覚えていない所だ。この人とこんな所行ったっけ?というのから、顔が浮かばない名前まで…。他人の経験を読んでいるようで、シュールに思える時もある▼人が自分の人生として振り返るのは、実は自ら好んで心に刻んできた記憶の一部で、その他は知らずのうち排除しているのだろう。その中には後に育ちうる宝物もあったかも…と思うとおかしい▼20数年ぶりの日記再開。いきなり風邪で、既に日付がとび始めたが、1日1日を心に刻み、そして豊かに忘れたい。(髙垣)
(ニュース和歌山2016年1月16日号掲載)