辛さが売りのオロチョンちゃんぽんを提供する和歌山市毛見の「さらしな」は、和歌山では珍しいちゃんぽん専門店の老舗だ。創業から51年間磨いてきた味は、幅広い世代から支持を集める。その味を今に伝える坂本日出男社長(51、写真左)と、20年以上厨房に立つ萩原裕志チーフ(55)が届ける味は、客と共に歩んできた店の歴史と料理人のこだわりが詰まっている。 (文中敬称略)
オロチョン誕生
坂本 祖母が元々、博多で生そば屋「さらしな」を経営していたのがルーツです。51年前に和歌山へ移り住み、特徴ある味を売り出そうと、九州にちなんでちゃんぽんを提供したのが始まりです。
──辛さが売りのオロチョンは当時から?
坂本 いいえ。当初はしょうゆとみそのちゃんぽんでした。30年前、東京で学生だった私を訪ねてきた父が、新宿で偶然、辛いスープが特徴のオロチョンラーメンと出合ったんです。父は「これをちゃんぽんに使おう」とひらめき、その珍しさから人気を集めるようになりました。
うま味生かす経験
──くせになる辛さですが、調理の際の工夫を。
萩原 スープは、国産豚の骨や鶏ガラ、さば節などに、野菜や昆布も入れて20時間煮込みます。長時間煮込んでもしつこくなく、味に深みがあるスープができあがります。そこに唐辛子やトウバンジャンなどのスパイスを混ぜたタレを入れます。目指すのはスープのうま味を損なわない辛さです。「辛いけどうまい」と言ってもらえるよう、スパイスを調整します。
──野菜をはじめとした具が豊富です。
萩原 全て国産食材を使うのは創業時から変わりません。大切なのはスープと野菜の量のバランス。初めに、フライパンで野菜と肉を炒め、そこへスープを流し込んで煮込みます。野菜が多いと水くさくなり、少ないとコクが足りなくなる。そこへ辛みとなるタレを混ぜて、野菜に味をなじませるんです。煮込み加減も味の濃さや歯ごたえを左右します。スープのうま味を生かすのは料理人の経験ですね。
客と共に磨く
──お客さんの反応は。
萩原 9段階から選べる辛さの種類はお客さんの声から生まれました。多くの人は食べる度により辛い味を注文します。物足りなくなるようですね(笑)。野菜の栄養分や食物繊維が詰まった健康食として食べる人もいて、「嫌いだった野菜を食べられるようになった」と喜びの声も聞きます。
──今後は。
坂本 ホタテやニンニクスライスなど新たなトッピングメニューに挑戦しています。お客さんの声を聞きながら味を磨いていきたい。スープもベースは変えず、ダシの素材を少しずつ変えて、「うまい辛さ」をぶれずに追究し続けます。長年愛されてきた味を守りつつ、お客さんと一緒にオロチョンちゃんぽんを進化させていきたいですね。
【ちゃんぽん さらしな】
和歌山市毛見65-5
☎073・444・9246
11時〜15時、17時〜24時
年中無休
(ニュース和歌山2016年2月24日号掲載)