原子力発電所事故があったウクライナのチェルノブイリと福島県を撮り続ける和歌山市出身の写真家、中筋純さん(49)が巡回写真展「流転 福島&チェルノブイリ」を3月2日(水)~7日(月)、県民文化会館中展示室で開く。中筋さんは「福島の事故の記憶が薄れる最中、今一度自らの立場に置き換え、目に見えない恐ろしさに想像を巡らせ感じ取ってほしい」と呼びかける。
中筋さんは智辯学園和歌山高校卒業後、東京外国語大学に進学。出版社に勤めた後、写真家に転身し、東京を拠点に活動する。チェルノブイリへは2007年以降、6回足を運び、これまで写真集を3冊刊行した。
また、東日本大震災発生後、福島第一原発事故で避難を強いられた浜通りで30回以上取材を重ね、変わりゆく街をフィルムに収め続ける。「まだ人の記憶に鮮明に残る浜通りの街並みには、徐々に野生に飲み込まれ始めている現実がありました。どこにでもある小さな地方都市の姿、撮影を進めていると故郷、和歌山の姿がオーバーラップしてきました」と振り返る。
福島の事故から5年、チェルノブイリの事故から30年の節目に全国を巡回する写真展。パノラマ9点と大型写真43点を展示する。チェルノブイリは産業遺構や廃きょ、福島は人の姿が消えた商店街や草が生い茂る線路など2つの被災地の時間の経過を切り取った。
中筋さんは「原発事故の災禍は人間と土地との関係性を断ち、そこに刻まれた記憶や歴史を強制終了させるところにあると思った。犠牲になったのが『たまたま』福島だったということを感じてもらえれば」と願っている。
午前9時~午後5時(最終日3時)。
写真=草が生い茂る福島の線路を撮影した作品
(ニュース和歌山2016年2月27日号掲載)