特集「3・11 あの日から5年」

 東日本大震災からまもなく5年。海南市で業務用雨ガッパを製造販売する尾崎産業の尾﨑昌司社長は、大津波で壊滅的な被害を受けた宮城県石巻市へ2年前からおもちゃと洋服を送っている。賛同した友人や社員へと支援の輪は広がっており、3月12日(土)に和歌山市のガネーシュ・ギリさんが開くチャリティーイベントで、被災地へ届ける洋服を募る。尾﨑さんは「5年経っても現地は厳しい状況が続いている。使えるけど使わなくなった服やおもちゃを譲ってほしい」と呼びかけている。

16030501_sinsai
 尾﨑さんが物資を送るのは、津波で家を失った石巻市の佐々木マキさんだ。2014年1月、カキ漁をする佐々木さんからカッパの注文を受け、住所から仮設住宅だと分かり、ゲーム機やボールを添えて送ったのが始まりだった。連絡を取り合う中、被災者のほとんどは収入が減り、服やおもちゃを子どもに買い与えられないと知った。友人や社員から支援物資を集め、これまで8回、段ボール箱20箱分を送った。

 尾﨑さんの活動を知り、海南市でタワシの製造業を営んでいた辻勝己さんは、500本のバスブラシを14年秋に佐々木さんへ送った。辻さんは「心が痛む悲惨な災害だった。在庫品を受け取ってもらい、こちらが感謝したいぐらい」と語る。昨年11月には20箱のみかんも届けた。尾﨑さんは「支援された人がまた別の人を支える。助け合いの連鎖でよりよい社会になってほしい」と望む。

 震災時、佐々木さんは8・6㍍以上の大津波が襲った石巻市の鮎川地区に住んでいた。幸いにも夫と子ども3人は無事だったが、家や車、家財道具全てを失った。避難所と仮設住宅に4年住み、ようやく復興公営住宅での暮らしを昨年4月に始めた。

 尾﨑さんから送られた物資は、仮設住宅や復興住宅の住民らと共有してきた。今年1月に届いた9箱分は、地域の集会所で広げたところ、2時間半でなくなった。佐々木さんは「家を失った人はゼロからのスタート。みんな自分のためじゃなく、隣近所や親せきにあげるために物資をもらっていきます」と喜ぶ。

 12日のイベントは、尾﨑さんの活動に共感したインド人ヨガ講師のギリさんが企画した。石巻市へ送る支援品を持ってきてくれた人にインドの飲み物、チャイと菓子をふるまう。「日本は発展しているので復興は進んでいると思い込んでいた。見返りを求めず、人のために役立ちたいという思いが広がれば」とギリさん。

 12日に集めた物資は、19日に集会所へ届ける。佐々木さんはこの日を心待ちにし、復興住宅や以前の仮設住宅の住民、子どもが通う保育園の母親ら被災者に声を掛ける。「5年経っても、高台から見た自分の町が飲み込まれる光景を思い出し、胸が苦しくなる。そんな時、尾﨑さんからの物資が届くと『前へ進め』って言ってくれているように感じます。今も忘れず支えてくれる人がいる。それが力になります」と声を震わせている。

  ◇     ◇

 チャリティーイベントは12日午前9時半〜11時半、和歌山市市小路の河北コミセン。洗濯済みの洋服やおもちゃ、本を持参。詳細は「チャリティー&チャイ東北のため」フェイスブック

写真=準備を進める尾﨑さん(左)とギリさん

(ニュース和歌山2016年3月5日号掲載)