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 自転車事故に備え、独自条例を定める自治体が出る中、県は2016年度、自転車による加害事故に対応する自転車保険への加入を促す。自転車運転者が歩行者を負傷させ、高額賠償を負うケースを受けたもので、4月6日(水)からの春の交通安全運動を皮切りにPRの機会を増やす方針だ。一方、自転車整備と一体となった「TSマーク付帯保険」が注目されるほか、専門家のもとには自転車に関する保険の問い合わせが増えており、一般の関心も高まっている。

 全国的に人身事故は減る傾向にあり、自転車事故も減少している。県内の自転車事故件数も2011年の835件が昨年は438件。だが、11年は自転車乗車中の死者5人、負傷者817人、昨年は死者7人、負傷者421人と死者数と、負傷者割合は減っていない。

 自転車が加害者となった件数は分からないが、昨年は自転車がからむ事故で歩行者が負傷する例は6件あった。ただ「高額賠償を生む事例は県内ではない」と県庁県民生活課。

 自転車での加害者事故による補償が注目されたのは13年に神戸地裁で出た判決の事案からだ。11歳の男児が夜間に自転車で走行中、62歳の女性と正面衝突し、女性の意識が戻らない状態となり、9521万円の賠償命令が出た。これ以前にも、東京で高校生が横断歩道帯の手前から車道を斜めに渡り、対向車線を自転車で直進中の会社員と衝突し、障害を負わせ、9266万円の賠償が認められている。

 県はこれらを踏まえ、交通安全運動での街頭啓発を行ってきたが、今年度は、学校でのルール・マナー指導に合わせた啓発など機会を増やし、ポスターやチラシを通じ保険加入を呼びかける。

 この中、県交通安全協会が普及を図るのが「TSマーク付帯保険」。TSマークは、日本交通管理技術協会が1979年に始めた。自転車安全運転整備士のいる店で、代金を払い、点検整備を受け、安全と認められると貼ってもらえる。補償の違う青マーク、赤マークがあり、赤マークは入院15日以上で10万円が補償されるなどの傷害補償と最大5000万円の賠償責任補償が付く。賠償額は昨年10月に2000万円から増額され、県交通安全協会は「問い合わせが増え、関心の高さを感じました」。

 交付枚数は、12年の7350枚をピークに、10年〜14年は平均5635枚。同協会では秋の交通安全フェアの際に自転車を無料点検し、TSマークをPRしており、「更新期間は1年。自転車を安全な状態に保ち、乗ってほしい」と強調する。

 他の保険はどうか。ファイナンシャルプランニング業務を行うアドバンスコミュニケーションズの秋山裕材代表は「問い合わせは本当に多い」と言う。秋山代表が勧めるのは個人賠償責任保険への加入だ。この保険は事故相手の生命・身体、財物が対象で、「自動車保険の特約で入れます。火災、傷害保険にも特約がありますが、自動車保険のものは補償無制限で、示談代行があるのがメリット」と語る。「小さな子どもが他人の車に傷をつけたような場合にも適応され、世帯主が入れば基本的に同居家族に補償は及ぶ。内容や及ぶ範囲を確認し考えてもらえば」とアドバイスする。

 県庁県民生活課は「自転車保険は加入率が把握しにくく、確認したら特約で入っていたということもあるようです。事故が起きてからでは遅いので、呼びかけをさらに強め、県民生活を守る一助にしたい」と話している。

写真=TSマークをPRするための自転車の無料点検

(ニュース和歌山2016年4月2日号掲載)