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 名勝和歌の浦の移り変わりを、奈良時代~室町初期の文学から読み解く『和歌の浦の誕生 古典文学と玉津島社』が4月20日(水)、清文堂から出版される。和歌山市和歌浦中の玉津島神社で2011年から3年間開かれた玉津島講座の講師3人が執筆した。その1人で近畿大学の村瀬憲夫名誉教授は「共著により、和歌の浦の原点と発展を多角的に記すことができた。長く厚い歴史と、深く豊かな文化にふれてほしい」と語る。

 書いたのは、和歌山に残る万葉歌を研究する村瀬さん、平安時代の詩歌や漢文学を専門とする梅花女子大学の三木雅博教授、『源氏物語』に詳しい近畿大学附属和歌山高校教諭で和歌浦出身の金田圭弘さん。和歌の浦の歴史や文学を学ぶ玉津島講座が好評だったのを受け、主催者で和歌山大学元教授の故・米田頼司さんが出版を提案した。昨年亡くなった米田さんの遺志を3人が引き継いだ。

 万葉集に詠まれた「若の浦」がどのようにして「和歌の浦」に発展したかを古典文学に焦点を当て、時系列で記した。『万葉集』、『古今和歌集』、平安時代の長編小説『うつほ物語』や『源氏物語』を元に、当時の景観や地形、政治、文化的位置づけを探っている。

 このほか、聖武天皇がなぜ若の浦を改め、「明光浦」と宣言したのか、また、若く美しい「人」だった衣通姫(そとおりひめ)がなぜ、「和歌の浦の神」になったのかなど、地元に伝わる謎にも言及している。

 村瀬さんは「米田先生と3人の願いは1300年続いた景観を1000年先に残すこと。和歌の浦の未来を考える道標になれば」と望んでいる。

 203㌻。3888円。県内主要書店で販売。清文堂(06・6211・6265)。

写真=講座内容を一冊にまとめた

(ニュース和歌山2016年4月16日号掲載)