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 東京の国立新美術館で3月30日~4月11日に開かれた具象画の全国公募展「示現会展」で、和歌山市西浜の中村恵伍さん(71、写真下)が最優秀の文部科学大臣賞に次ぐ示現会賞に輝いた。受賞作は独特の色使いで壮大な自然を描いた130号(194×162㌢)の大作「高原」(同上)。中村さんは「『絵が下手、嫌い』から描き始めてまもなく50年。今が一番気楽に取り組めています。発表するのですから出来映えは大切なのですが、それを気にせずに描けているのが何より幸せ」と喜ぶ。

 1947年創立の示現会は具象画を描く全国の作家でつくる団体。現在は850人以上が活動する。今展には1014点の応募があった。

 受賞作の「高原」は、中村さんが過去に写生したり、趣味の山登りで見た景色から心に刻み込まれた風景を取り出して描いたもので、この通りの場所はない。手前に広がる草原の向こうにある山は「龍門山のイメージを借りてきました」。赤系統の色を基調としたのは「70歳を超え、人生のたそがれを表現したかった」と明かす。

 示現会和歌山支部長や県展の審査員を務める中村さんが絵を描き始めたのは24歳の時だ。子どものころは絵が苦手で、「どちらかと言えば嫌いでしたね」。そこからスタートし、「今が一番楽しい」と笑顔を見せる。「自分の表現できること、できないことが少し分かってきた。できることの中でどう表現するか。100㍍を10秒で走るのは無理で、15秒かかるなら、その15秒の中でどう楽しめるのか。そんな風に考えるようになってきました」

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 10年前の示現会展で、今回の示現会賞と同じ最高賞の1つ、三上賞を受賞。「あの時もうれしかったけれど、今回の方がうれしさは大きい。今もまだまだですが、自分にしか分からない〝心〟を表現できるようになった。前はそういったことを考えていなかったですから」。写真処理技術が向上し、実際の風景をキャンバスに簡単に写し取れるようになった昨今、「写真や映像に写すことが困難なものを描いてゆきたい」と目を輝かせる。

 なお、和歌山市の北村好美さんが「赤いリストランテ」で佳作賞を受賞。中村さん、北村さんの作品を含む入賞作は、6月1日(水)~6日(月)に県民文化会館で開かれる和歌山巡回展で展示される。

(ニュース和歌山2016年4月23日号掲載)