バリアフリーが叫ばれ久しいが、和歌山でも様々な壁を越えようとする試みが生まれている。視覚障害者のグループはバリアフリー映画上映会を企画、性的少数者のグループは情報誌を発刊。それぞれの取り組みを取材した。
視覚・聴覚障害者に映画を 音声ガイド、字幕付き上映会
視覚障害者の外出を応援する「つれもて和歌山」が29日(日)午後1時、和歌山市湊本町の市民図書館3階ホールでバリアフリー映画の上映会を初めて開く。視覚・聴覚障害者向けの音声ガイドと字幕が付いた映画で、昨年公開の『くちびるに歌を』を上映。山﨑浩敬(ひろたか、写真)代表は「和歌山でのバリアフリー映画の上映はほとんどない。健常者にも来てもらい、目が見えなくても楽しめる映画があるのを知って」と呼びかける。
同市職員の山﨑さんは、30代で進行性の網膜色素変性症を患い、現在は明暗が分かる程度の弱視。「視覚障害者が家にこもらず、社会参加できる機会をつくろう」と2007年、職員仲間らとつれもて和歌山を結成した。視覚障害者を誘い、メンバーの介助でプロ野球観戦やぶどう狩り、工場見学ツアーを開く。
バリアフリー映画は、セリフの間に場面を説明する音声が流れ、視覚情報を補う。邦画にも字幕が付くため、聴覚障害者も楽しめる。映画鑑賞が趣味だった山﨑さんが大阪で知り、和歌山にも広めようと上映会の定期開催を企画した。
『くちびるに歌を』は、長崎県五島列島にある中学校の合唱部が織り成す青春映画。申し込み不要で先着60人。第2回は7月31日(日)午前10時、和歌山市木広町のふれ愛センターで、小説家、東野圭吾原作のドラマ3作品を上映。先着50人。いずれも無料。
山﨑さんは「目が見えなくなった時、映画鑑賞はあきらめようと思っていた。でもこれなら楽しめる。テレビ画面では感じとれない音の迫力や、スクリーンの大きさを体感してほしい」と語る。
詳細はつれもて和歌山HP(http://t-wakayama.jimdo.com)。
性的少数者のニュース掲載 フリーペーパー『にじわか』創刊
性同一性障害や同性愛など性的少数者の自助グループ「チーム紀伊水道」が4月25日、性的少数者に関するニュースや身近な話題を盛り込んだフリーペーパー『にじわか』を創刊した。衛澤創代表(写真)は「昨年、性的少数者の総称『LGBT』が話題になったが、『和歌山にもいるの?』という状況で、言葉が一人歩きしている。冊子で気軽に情報にふれてほしい」と意気込む。
紀伊水道の交流会に参加するメンバー5人で作成。当事者以外や関心のない人にも手にとってもらえるよう、巻頭特集はおすすめのパン店を紹介した。このほか、初心者のためのセクシャルマイノリティ講座、ファッション、マンガなど、各メンバーが得意分野を生かし執筆した。
性同一性障害のスポーツ選手の五輪出場を巡る話題、映画館で同性カップル割引が認められた作品といった国内外のニュースや、性的少数者に関する議題が上がった3月8日の県議会傍聴レポートも。今後、読者からの質問や相談を受け付ける投稿欄も設ける。
衛澤さんは「取材先で団体の説明をすると快く理解してもらえた。手探りで作ったので、ぜひ感想を寄せてほしい。悩みや知りたいことを投稿してもらいたいですね」。
A5判、22㌻。ビッグ愛9階のりぃぶるなどで配布。次回は7月下旬発行。紙面づくりへの協力者も募る。なお、5月15日(日)は多様な性に理解を求める街頭アクション「わかやま愛ダホ!」をJR和歌山駅前で実施する。チーム紀伊水道(kii.suidoh@gmail.com)。
(ニュース和歌山2016年5月7日号掲載)