本が好きな人たちでつくる「和歌山市民図書館友の会」。会員自身が同館の特徴や司書の仕事を知るための研修会を1年前から開いてきたが、手作りの友の会通信を5月14日(土)から配布したり、一般向けに館の魅力にふれてもらう催しを企画したりと、活動の幅を広げていく。中西真生会長は「市民にもっと『図書館を楽しみましょうよ』と呼びかける会。どのように利用すればいいか、館内でどんな活動ができるのかなど発信していきたい」と語る。
「〝159〟は人生訓の本が並びます。余力がないとこの棚の本は集められないので、その図書館の元気のバロメーターなんですよ」「〝049〟は雑著。どれにも当てはまらない本がこの棚にあります。ゆっくり眺めるとおもしろい発見があるかもしれません」。約10万冊が並ぶ同市湊本町の市民図書館一般開架室。本につけられた900番台までの番号を追いながら、司書の話に会員たちが耳を傾ける。昨年8月に実施したブラウジング(※)ツアーの一場面だ。
友の会発足に向けた活動は昨年早々始まった。読書会の参加者らが勉強会を重ね、6月に20、30代中心に約20人で立ち上げた。まず開いたのが、汚れや傷みのある本の修復とビニールのブックカバーを貼る体験会。ブックカバーは司書なら1冊約3分だが、「僕らは司書の方に手伝ってもらっても20分ほどかかりましたね」と中西会長は笑う。
10月は調査・研究のための資料の紹介や資料の探し方の案内を司書が行う「レファレンスサービス」、12月と今年1月は同館3階にある移民資料室について職員から説明を受けた。3月には表紙が見えるように本を置ける面展示台を段ボールで作る体験会。完成した面展示台は現在、真田幸村や妖怪に関する本を集めたコーナーで活躍中だ。
こうした活動を経て、今月から広く会員を募集。会誌「図書館手帖」を年4回発行し、きょうから配布する創刊号ではレファレンスサービス、移民資料室について解説する。会員が薦める本の紹介欄も設ける。さらに一般向けイベントを計画中。司書の解説を聞きながら開架室を回り、怖い本や、5年間借りられていない本を探すブラウジングツアー、謎を解きながら館内を巡る企画など遊び心たっぷりの内容で検討を重ねる。
会員の西峰祐美さんは「レファレンスサービスのようなことまでしてもらえると思っていなかったし、移民資料が全国で最もそろうことも知らなかった。私のように本を借りるだけの所との認識の人も多いと思いますが、いろんな使い方ができることを伝え、たくさんの人に利用してほしい」と願う。
県内の図書館では唯一の友の会だが、他府県では少なくない。福井県にある鯖江市図書館の友の会は返却された本を棚に戻す作業を手伝うほか、専門家を招いての講演会を毎月開く。佐賀県の伊万里市民図書館で活動する「図書館フレンズいまり」も会員と館の職員が一緒にイベントを切り盛りする。和歌山市民図書館司書の額田美那子さんは「これまで通り蔵書を大切にすると同時に、図書館の新しい可能性を友の会と共に考えていきたい」と目を輝かせている。
友の会の年会費は一般が1口1000円。詳細はHP(http://walibtomo.strikingly.com)。
※ブラウジング…本棚を漫然と眺め、気になる本を取り出し読むこと。
写真上=傷みのある本の修復体験会 同下=図書館手帖
(ニュース和歌山2016年5月14日号掲載)