選挙年齢が18歳に引き下げられてから初の国政選挙となる参院選が7月10日(日)、投開票を迎えます。新たな有権者となる18、19歳は全国で240万人、和歌山県内でも2万人に上ります。

 引き下げの目的には、若者の政治参加があります。平成以降の参院選を振り返ると、平均投票率が50%台なのに対し、20代はいつも30%台。若者の政治への関心の慢性的な低さを解消すべく考えられたのが、18歳選挙権の実施でした。

 県選挙管理委員会は県内の全高校で出前授業を実施しました。全校集会での一コマであったり、模擬選挙を行ったりと形は様々で、その中のある1校を取材させてもらいました。

 授業では、まず選管職員が選挙のしくみや必要性、公約などの情報の集め方を説明。次に実際に選挙で使っている記名台や投票箱を使って模擬投票を体験しました。生徒に感想を尋ねると「思ったより簡単だった」。

 「選挙は難しい」と言った若者の意識を変えるには、こういった授業が有効でしょう。しかし、それだけで良いのでしょうか。投票する動機の核心である、選挙の意味を考える時間が少ないように感じました。

 高校時代、生徒会活動に情熱を注いだ経験があります。そこで学んだのが、「自分たちの環境は自分たちで変えていく」という意識です。学校の設備や校則について話し合う生徒総会が年に一度開かれます。そこで、「毛染めやパーマは教師が良くて、なぜ生徒はだめなのか」「カーディガンを教室でも着たい」といった意見が出され、教員、生徒、保護者が集まる三者協議会で話し合いました。

 校則に不満があれば守らないのではなく、きちんとした手続きを踏んで自分たちで変えていく。望む環境を自らの手でつくり上げるという考え方は、社会にも言えることで、選挙の際に欠かせない視点と言えます。

 多くの高校生にとって、選挙は遠い存在かも知れません。本当に必要な選挙教育とは、公約の見方や投票方法といったテクニックを教えるのではなく、学校という小さな社会単位の中で周囲の環境を考え、自らの意見を発表し、意見を交換する中で、社会の一員である自覚や自治意識を育むことだと思います。

 普段から身の回りの環境や街の将来を考えることが、投票への動機につながります。意思ある一票が多いほど、社会は必ず良くなっていくはずです。(林)

(ニュース和歌山2016年6月25日号掲載)