Q. 脱腸の症状と、内視鏡を使った手術について教えてください。

fuku◆消化器外科・一般外科 福外科病院 日本外科学会認定専門医
日本大腸肛門病学会認定専門医  福昭人院長

16042304_dacchoA.  脱腸は、下腹部から足の付け根(そけい部)の筋肉組織が弱くなり、いきんだりして腹圧が加わるとその穴の部分からお腹を覆う腹膜が袋状に飛び出てくる病気です。重いものを持ち上げたり、咳き込んだりしてお腹に力を入れると、下腹部が少し腫れるのが初期症状です。次に、突っ張り感、違和感、引っ張られる感覚が出てくれば黄信号です。さらに悪化すると大きく腫れ上がり、緊急手術になることもあります。

 手術は従来、腫れている部分を直接切開する「切開法」(図1)が一般的でしたが、近年は、内視鏡を使った「腹腔鏡下手術」(図2)が主流です。切開法とは異なり、病巣の筋膜切開を行わないので、術後の傷や痛みが軽度です。従って、原則として、日帰りあるいは短期滞在型入院が可能です。どの治療も一長一短があるのでかかりつけ医によく相談し、腹腔鏡下手術を選択する場合は、内視鏡治療を行う外科医を紹介してもらいましょう。

 

 Q.子どもが「高度近視」と診断されました。注意することは?

◆眼科 吉村眼科 吉村利規院長
yosimura
A. 高度近視とは、幼児の頃から近視が強くなる病気で、「悪性近視」とも呼びます。幼児の目は眼軸(角膜から網膜までの距離)が短いのが一般的ですが、高度近視は眼軸が伸びている軸性近視であり、そのために網膜が引き延ばされ、黄斑部の萎縮や眼底出血、網膜剥離等の病的変化を起こしやすくなっています。

 高齢者の眼底検査(ドックの眼底写真)などで、高度近視が原因と思われる黄斑変性や緑内障様の視神経乳頭の変化を見つけることがあります。子どもの頃に適切な治療を受け、近視の進行を抑えることができていれば、このような病的変化を起こさずに済んだかもしれません。

 高度近視と診断された場合、定期的に眼科を受診し、適切なメガネをかけることが必要と思われます。しかし、完全矯正がよいのか、低矯正がよいのか、メガネ、コンタクトいずれがよいのか議論は続いており、答えはまだ出ていません。

 ただ、軸性近視が高度近視の原因の一つであることは確かです。眼底検査でその兆候は確認できますので、視力が低下してきたら、眼鏡店でメガネを調整するだけではなく、かかりつけの眼科で詳しい検査を受けることをおすすめします。。

 

Q. 健診で便潜血陽性でした。大腸内視鏡検査は必ず受けるべき?

◆外科 楽クリニック 藤田定則院長

rakuA.  健康診断で便潜血が陽性と診断された場合は、クリニックでも総合病院でもかまいませんので、大腸内視鏡検査を行っている消化器内科(当院は実施していません)をできるだけ早く受診してください。検査の途中、万が一、ポリープや早期の大腸がんが発見されれば、その場で切除することが可能です(入院が必要なこともあります)。

 排便時に出血があると驚いて心配になり、肛門外科や内科を受診する人はいますが、健康診断の便潜血の結果が陽性だったからといって急いで検査を受けに来る人は少なく、「きっと痔だろう」と考える人もいるようです。

 しかしながら、当院でも、過去3年間に痔の手術を受けられた40歳以上の方を振り返ってみると、11人に1人の割合で大腸ポリープや大腸がんを認めています。そのため、健康診断で要精密検査の結果が出た方には、必ず大腸内視鏡検査を受けるよう指導しています。また、家族や兄弟に大腸がんが見つかった場合も、検査を受けるよう勧めています。  大腸内視鏡検査の準備は大変ですし、受診には勇気が必要です。しかし、「やっておけば良かった」と後悔しないためにも行動することが大切です。  

 

Q. スギ花粉症に対する舌下免疫療法とは、どのような治療ですか?

◆耳鼻咽喉科 木下耳鼻いんこう科 木下 和也院長

kinoshitaA.  近年、舌の下にスギ花粉の液を滴下して耐性をつけさせ、スギ花粉症を治す治療法「舌下免疫療法」が開発されました。14年10月からシダトレンという商品名で販売され、健康保険適用薬となっています。

 まず治療に入る前に、血液検査でスギ花粉の抗体が陽性であることを確認します。スギだけが陽性の人に治療効果が高いです。  初回のみ医療機関で舌の下に滴下し、副作用の有無を確認します。その後は自宅で服薬となります。最初の2週間で徐々に量を増やし、その後、一定量を毎日投与します。効果が出るまで2〜5年ほど長期にわたる継続治療が必要です。また、花粉飛散時期に治療を開始できないため、6月から12月に開始します。  すぐに効果が出る治療法ではないため、花粉シーズンには抗アレルギー剤を併用します。臨床治験の結果によると、多くの人に有効であると報告されています。

 副作用は、極めてまれにアナフィラキシーショックや、舌の周りに小さな粘膜発赤や潰瘍が出ることがあります。今年からダニ抗原に対する治療もできました。ただし、これらの治療を行えるのは、指定を受けた医療機関に限られています。

(ニュース和歌山2016年6月25日号掲載)