全線800キロに渡るサイクリングロードの整備を県が進める中、市民や事業者が自転車愛好家(サイクリスト)の受け入れに工夫を凝らしている。和歌山市では市民有志が自転車を停めるサイクルラックの普及やマップづくりに乗り出したほか、4月には、工具の貸し出しや給水所を備えた同市初のサイクルステーションが出島にオープン。岩出市と紀の川市では、来店者に独自の特典やサービスをふるまう取り組みが始まった。
自転車で走りやすい環境を整え来県者を増やそうと、県は2014年から海、川、山のサイクリングロードを整備中だ。車道に青線を引き、走りやすい道に誘導する。紀の川河川敷を含む川のルートは8割完成。山、海のルートはほぼ未整備だが、海のルートでは雑賀崎の県道の一部に青線が引かれた。
こうした動きの中、和歌山市の職員がサイクリングロード魅力アップ政策研究グループを昨年発足。市民を交えて充実を図ろうと、職員有志と自転車愛好家が今年4月、サイクルプロジェクトを立ち上げた。
まず始めたのは、手作りのサイクルラックの配布と、和歌山大学サイクリング部とのマップづくりだ。6月には加太でラックに色を塗る子ども向けのワークショップを開き、約20人が参加した。プロジェクトを引っ張る市職員の西林孝紘さんは「スタンドが付いていない自転車もあり、駐輪に苦労するので、サドルをかけて停められるラックがあれば乗る人は助かる。設置店を募り、サイクリストが過ごしやすい環境をつくっていきたい」と話す。
県が市町村に補助金を交付し、10月末をめどに、道の駅や公共施設など約40ヵ所に空気入れや工具を貸し出すサイクルステーションを設置する計画を進める中、4月には、自転車愛好家の交流の場を作ろうと民間のステーションが国道24号線沿いに登場した。掲示板には「〇月〇日に一緒に走りませんか」と仲間を求める張り紙が並ぶ。
同施設でサイクリストを迎える新田三郎さんは「情報交換や集合場所に活用されています。ゆくゆくは走行会や、初心者向けのイベントが開ければ」と望む。
岩出・紀の川市28店は独自サービスも
12年に那賀振興局や和歌山電鐵などが立ち上げた紀の川エリア観光サイクリング推進協議会は今月、岩出市と紀の川市のカフェや道の駅など28ヵ所に「紀の川サイクリストおもてなしスポット」を設けた。空気入れや工具の貸し出しのほか、水や氷を提供。青洲の里は入館料半額、高砂アラレは購入者におかきをプレゼントと、独自のサービスでもてなす。
全国的に同様の工夫は進んでおり、琵琶湖を一周する通称〝ビワイチ〟の人気に伴い、滋賀ではサイクリスト対象に飲食店がクーポンを出したり、四国のしまなみ海道は自転車店、ガソリンスタンドの有志が走行中のトラブルを救援する住民参加のサービスがある。
同協議会の出津野歩さんは「これまでも独自にラックを設置していた店はサイクリストに好評でした。スポットを掲げることで、駐輪に困ったり、ウェアを着ていたりと店に入りにくい要因を解消でき、様々な施設を巡れるようになる。ひいては街へのリピーターが増えるはず」と描いている。
(ニュース和歌山2016年8月27日号掲載)