家庭で子どもの教育をなおざりにする親がいる中、家庭教育支援を条例化する自治体が増えている。和歌山市は「子どもには親がまず責任を負う」ことを第一に、学校や地域の役割を明確化する条例制定に向け概要を公開、9月26日(月)まで意見を募る。一方、条例がなくても、子どもがいる家庭を訪問し、親の気持ちを聞くことで支援する自治体もある。市学校教育課は条例をきっかけに親に寄り添う機会を増やし、「不安を抱える親を支えたい」と考えている。
家庭教育支援条例は、熊本県が2013年に全国で初めて設けた。鹿児島、静岡など7県と石川県加賀市、長野県千曲市が続き、和歌山市が制定すれば中核市初となる。
各自治体は、条例の原点に親の責任を掲げ、住民、学校、地域団体の連携、親の学び講座や相談体制の充実を盛り込む。
熊本では条例の裏付けを得て、教育、福祉、警察ほか関係機関の連携が強化。講演会やワークショップなど親の学び講座受講者は12年度の3万5000人から15年度は6万5000人に増えた。
ただ、課題は講座に出ない、出られない親の支援。学校や地域とかかわりを持てず、子育て放棄、虐待に至り、教育まで気がまわらないこともある。和歌山市のある教員は「精神的に不安定で、ゴミが散乱した部屋で暮らし、何かと学校の問題にする、教育どころでない親も多い」と明かす。
こういった家庭を訪問し親に寄り添おうと、条例はないものの、県内では橋本市と湯浅町が09年、家庭教育支援チームによる訪問を始めた。
橋本市は不安を抱える親の要望で、支援チームが2週間に1回訪問する。同市教委は「外部とかかわれなかった人が、話を聞いてもらうことで関係を取り戻したこともあります」。
湯浅町は0歳から中学生がいる全戸に、家庭教育情報誌『すまいる』を年4回、訪問して配る。スクールソーシャルワーカーの上田さとみさんは「例えば、子どもが学校に行けず悩んでいても、親が気にしなければ、周りが気づかないことも。全戸に行くことで、相談を待つだけでは分からなかった問題が浮かび上がることがある」と手ごたえを話す。
県内初の条例化を目指す和歌山市も、案は他の自治体と同様の内容。市学校教育課は条例で、「教育の原点は家庭にあるとみんなが再認識することが重要」という。親の学び講座はもちろん、地域とかかわれない家庭には、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーと連携した訪問支援を視野に入れ、親の意識を高めてもらう考えだ。
社会教育学を専門とする和歌山大学地域連携・生涯学習センターの西川一弘講師は「問題を抱える親、子どもは多く、支援ニーズは高いが、潜在しているため掘り起こさないと意味がない。どこまで実効性を高められるかに条例の成否がかかる」と効果に関心を示す。
条例案は市役所本庁舎とHPで公開中で、12月市議会に提案を予定している。同課(073・435・1139)。
(ニュース和歌山2016年9月17日号掲載)