端午(たんご)の節句、男児の成長を祝って飾るこいのぼり。和歌山市本町の人形専門店「をぐらや」は、昭和後期に製造された綿の色鮮やかなこいのぼりをブックカバーや名刺入れに変身させ、販売を始めた。同店の森田充子さんは「こいのぼりは外に飾るだけあって丈夫で、吹流しには鶴や亀甲柄など縁起がよいとされる柄が使われています。今にない色合いとデザインが魅力です」と声を弾ませる。
5年前から和小物の製造も行う同店は、廃業した業者から、昭和後期まで製造していた綿素材のこいのぼりの生地を引き取った。現在主流の合成繊維に比べると、生地にハリがあり丈夫で、色遣いや模様は〝昭和風〟だ。
黒の真ごい、赤のひごい、青の子ごいの3匹と、ピンクや黄色のカラフルな吹流しで、大きいものは全長8㍍のこいが染められている。
縫製前の生地から、ウロコや目玉、吹流しに描かれた模様と色を組み合わせ、スタッフが手作りで文庫本サイズのブックカバー、名刺入れ、革ひもを付けた携帯ポーチに仕上げた。8月中旬に販売を始め、レトロな味わいが評判を呼んでいる。
さらに素材を生かそうと徳島の染色作家に依頼し、本藍や柿渋染めを施した生地が完成。こいのぼりの鮮やかな色合いに落ち着いた青や茶色がマッチし、アロハシャツやワンピース、クッションカバーと、さらなる商品化のアイデアをふくらませる。
森田さんは「こいのぼりは子どもの成長を願う気持ちが込められたものです。今の時代に合う小物を作り出し、日本の伝統行事を再認識するきっかけになれば」と望んでいる。
同店(073・423・0393)。
写真=こいのぼりの柄を生かした商品
スタッフが手作業で製作する
(ニュース和歌山2016年9月17日号掲載)