300年前の歴史的瞬間

 160924_yosimune下の絵は、徳川吉宗が将軍宣下を受けた時の様子を描いた明治二十二年(一八八九)の浮世絵です。江戸時代の将軍は神聖な存在とされ、当時は描くことが許されませんでした。近代になってその制約がなくなると、こうした歴史的場面を描いた浮世絵が作成され始めました。

 享保元年(一七一六)四月三十日、七代将軍の徳川家継は八歳で急死しました。この日、吉宗は藩邸にいましたが、急ぎ江戸城へ登城するよう要請されました。城内では老中などが誰を次期将軍にするか協議し、吉宗を選びました。御三家の当主の中から吉宗が選ばれた理由は諸説ありますが、徳川家康に近い血筋や年齢、藩主としての実績などが評価され、最終的に天英院(六代将軍・家宣の正室)に支持されたことが決め手となって後継者になりました。八月十三日に中御門天皇の宣下を使者から受け、晴れて八代将軍に就任しました。旧暦の八月十三日を現在の暦になおすと九月二十八日にあたります。

 今年は、和歌山市内で、この日から十月二日までを「吉宗ウィーク」と名付け、各種イベントが開催されます。(和歌山市立博物館学芸員 佐藤顕)

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 徳川吉宗のゆかりの場所、文化財を毎週土曜号で紹介します。

(2016年9月24日号掲載)