怖さ:4 海の妖怪 熊野地域
江戸時代の妖怪画家、鳥山石燕は中国の諺に基づき、栄螺鬼をこう解説する。「年月を経れば、雀もハマグリになり、ネズミもウズラになるという。ならばサザエが鬼になっても不思議でない」。万物は長い年月を生きると変化し、霊力を身につけるというのだ。和歌山にはこんな話が残る。海で溺れる美女を海賊が見つけ助け上げた。女があまりに美しいので、海賊たちは次々と近寄るが、実はその女、栄螺鬼が化けたものであり、近づく海賊たちの睾丸を全て食いちぎってしまった。海賊は睾丸を取り戻すため、栄螺鬼に莫大な黄金を支払った。金を金で返してもらうとは、こりゃタマらん話だ。
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妖怪をこよなく愛する和歌山市の漫画家、マエオカテツヤさんが毎週土曜日、妖しの世界に誘います。
(2016年9月24日号掲載)