舞踏家 森さん 『スペイン子連れ漫遊記』出版
本場のフラメンコをこの目で見たい──。和歌山フラメンコ協会会長の森久美子さんが、1989年に小学生の娘2人を連れてスペインに渡った思い出を『スペイン子連れ漫遊記』にまとめ、9月16日に出版した(写真)。約30年間、フラメンコ道を走り続ける原点の旅。「インターネットも携帯電話もなかった時代、子どもの手を引き、命がけで飛び込みました」と語る。
同市友田町のスタジオ、ラ・ダンサアンダルシアで後進の指導に当たる森さん。2000年以降、和の要素を取り入れた創作フラメンコを生み出し、09年に県文化奨励賞を受賞した。10月1日(土)に和歌山城周辺で開かれる竹燈夜では、和歌山城をバックに、「侍フラメンコ~吉宗」を上演する。
『子連れ漫遊記』は、スペインでフラメンコを習得しようと飛び込んだ3ヵ月間を記したエッセー。「あれから50回以上は行って、そのほとんどは覚えていないのに、この時のことだけは今も鮮明。子どもを連れ、それだけ緊張していたのでしょう」
教室を探して回り、洞くつで小中学生に混じって靴音を鳴らしたこと、白熱した唄、ギター、踊りと手拍子に「これが見たかったフラメンコだ」と涙したステージと、感動の日々をつづる一方で、娘と同じ年ごろの少女が生活のためにショーに出る光景など、フラメンコを取り巻く背景にもふれた。
小学校を長期休学させ共に回った娘も、今はフラメンコ舞踊家として活躍する。森さんは「情熱と勇気を持ち追い求めれば、自分の世界ができる。子育て中のお母さんには『子どもが大きくなってから』『お金がない』と理由をつけず、夢に挑戦してほしい」とエールを贈る。
四六判、145㌻、1296円。主要書店で販売。同スタジオ(073・402・4331)。
(2016年9月24日号掲載)