県森林インストラクター会主催の「わかやま森づくり塾」に1年間参加した。月1回、大学教授や学芸員から植生や林業を学ぶ座学と、実際に森に入り、チェーンソーでの竹林整備などを体験してきた▼参加のきっかけは、昨年行った屋久島旅行。樹齢2000年以上の巨木が今なお息づく緑濃い森、それらを崇拝し、守り続ける地元の人々に出会った。山が持つ神秘性と奥深さに心を奪われた▼塾の最終講義があった先週の日曜日、みなべ町で明治時代から続く紀州備長炭の炭焼き職人を訪ねた。ウバメガシは一度伐採すると再生に40年以上かかる。その職人は森を守るため、手間はかかるが太い幹だけを選んで切り、細い幹は生長する15年後まで待つ。「目先の利益にとらわれ、人間の都合で仕事をしてはいけない。山に合わせて生きるんです」▼山を敬う心は木の国、和歌山にも根付いていた。価値ある時だけ利用され、放置された森は数知れない。屋久島の人や炭焼き職人のように、守り受け継ぎたい。(秦野)
(ニュース和歌山2016年10月1日号掲載)