県警 抑止に対策強化 個別訪問で自主返納促す
県内の交通事故数が14年連続で減少する中、高齢ドライバーによる事故の割合が増加している。特に死亡事故の割合が高く、今年は9月末までに発生した27件中、65歳以上によるものは13件と5割を占めた。県警は個別訪問し、運転免許証の自主返納を促すなど対策に力を入れる。県警交通企画課の龍田清治次席は「日暮れが早まる秋から冬にかけて事故が多い。和歌山の交通事故抑止には高齢ドライバーへの対策がきっ緊の課題」と警鐘を鳴らす。
昨年、県内で発生した交通事故は3498件で、10年前の2006年から半数以下に減少した。一方、高齢ドライバーによる事故は昨年、1054件発生。10年前の1662件から減ってはいるものの全体に占める割合は2割から3割と増加している。
県警によると、高齢ドライバーの事故の特徴は信号や標識の見落としによる衝突のほか、川や畑への転落、フェンスにぶつかるなど単独事故が多い。70歳以上が免許更新前に受ける高齢者講習を10月に受講した和歌山市の80歳男性は「反射神経がにぶくなり、突然飛び出す自転車や歩行者に突差に対応できるか不安に感じることも」と明かす。指導する県自動車学校(同市園部)の関孝介さんは「視力や判断力の低下の影響もありますが、大回りでの左折や、対向車線に近い右寄りを走るなど長年の運転癖が抜けない人が多い」と話す。
県警は昨年10月から85歳以上のドライバー宅を訪れ、免許証の自主返納を促す。現在まで8039人を訪問し、40人が返した。和歌山西警察署は緊急連絡先の確認と詐欺被害防止の啓発を兼ね、年齢を引き下げて80歳以上を対象に回る。佐木靖和巡査長は「事故を起こした人や運転に支障のある持病をもつ人には特に返納を勧める。中には『身分証明書代わりで、一度取った資格を失いたくない』『都会のようにバスの本数がないので車がないと不便』と言う方もいます」と語る。
県内の返納者は制度が始まった1998年から年々増加し、昨年は2100人、今年は8月末で1547人。県警は自家用車代わりの足となる公共交通の充足を市町村に働きかけており、龍田次席は「公共交通が発達していない和歌山では買い物や通院と車がないと不便なのは確か。大阪や東京のようにすぐに返納とはいかない」と語る。
全国の公共交通機関が充分でない地域では、NPOらが住民を目的地までタクシーの半額程度で送る「公共交通空白地有償運送」を取り入れる自治体が増えている。県内では初めて北山村が7月に導入。返納するともらえる運転経歴証明書の保持者が通院に使う際、料金の3分の1を助成する。運営を請け負う北山村社会福祉協議会は「バスや電車を乗り継ぐのは高齢者には負担。手ごろな価格でドアツードアの運送が喜ばれています」。
和歌山の交通まちづくりを進める会の志場久起事務局長は「和歌山は他府県に比べ、交通弱者を応援する体制づくりが遅れている。自主返納を促すには、返納後も高齢者が自由に移動できる仕組みを官民あげて整えていくべき」と話している。
写真=運転癖や注意点をアドバイスする高齢者講習
(ニュース和歌山2016年10月22日号掲載)