吉宗は好奇心旺盛な人物として知られています。長崎へ到着した象を陸路で江戸へ呼び寄せて城内で見物したり、自ら法律の研究や天文・気象の観測を行ったりしています。絵画鑑賞も好み、絵師に模写させて積極的に収集しました。若い時には、紀州東照宮を訪れて所蔵する資料を内覧し、東照宮縁起に関心を持っています。また、自らも絵を描き、時には家臣に与えました。
この資料は、吉宗が描いたと伝わる鳩の絵です。鳩の右上には「頼方」と署名され、藩主就任前に描いたと考えられます。吉宗の絵は現在も多数残っており、鳥は人物や馬などとともに頻繁に画題として選ばれました。よく絵を描いた父・光貞の影響も受けて幼少期から絵画を習い、江戸で木挽町狩野家の狩野常信に師事しました。
絵の上に記された賛は吉宗の兄・頼職のもので、現代的に表すと「山畑の 側の立つ木に いる鳩の 友呼ぶ声の すごき夕暮」と記されています。
この絵は十一月二十七日(日)まで和歌山市立博物館で開催される「城下町の絵師たち」で展示しています。(和歌山市立博物館学芸員 佐藤顕)
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徳川吉宗ゆかりの場所、文化財を毎週土曜号で紹介します。
(ニュース和歌山2016年10月22日号掲載)