怖さ:4 山の妖怪 出没地域:湯の峰温泉
昔、奈良の天ヶ瀬に射馬兵庫頭という猟師がいた。
ある時、伯母ヶ峰の奥で背中に熊笹の生えた大猪を撃った。それから数日後、紀州湯の峰の温泉に、足を傷めた野武士が湯治にやって来た。野武士は自分の寝ている部屋を見るなと宿の者に言いつけたが、宿の主人はこっそり部屋を覗いてしまう。そこには背中に熊笹の生えた怪物が座敷一杯になって寝ていたという。これが「猪笹王」である。
湯の峰温泉といえば、小栗判官伝説や日本最古の湯として有名だが、人も獣も妖怪までもが湯治に来るとは、さすがの名湯なのである。
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妖怪をこよなく愛する和歌山市の漫画家、マエオカテツヤさんが毎週土曜日、妖しの世界に誘います。
(ニュース和歌山2016年10月29日号掲載)