颯爽とした馬上の姿
今年は吉宗将軍就任三百年を記念して数々の関連イベントが行われ、多くの人に江戸時代の歴史へ関心を持っていただく機会となりました。この気運を継続させ、和歌山の歴史的魅力を内外へ発信するためにも、今後も地道に資料の保存・調査・研究を続けていくことが大切です。
この資料は騎馬図と野馬図が収められた巻子で、紀州徳川家に伝来したものです。箱書に「吉宗将軍筆」と記されており、吉宗の作品であることがうかがえます。九日に和歌山市へ寄贈されることとなった貴重な資料です。この絵が描かれた時期などは、今後、時代状況を踏まえて調査していく必要があります。
写真の騎馬図は、青年期の吉宗が乗馬する様子を描いたものと伝わっています。吉宗は乗馬を得意とし、父・光貞が馬上の姿を見て四男であることを惜しんだと言われており、質素な服装で颯爽(さっそう)と馬を乗りこなす姿は吉宗のイメージにぴったりです。
野馬図は吉宗が描いたと伝わる躍動感ある馬の図です。吉宗の絵は現在も多数残り、馬は頻繁に画題に選ばれました。
この資料は十日(木)から和歌山市立博物館の常設展示室で展示します。
(和歌山市立博物館学芸員 佐藤顕)
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「吉宗遺産」は今回で終了します。
(2016年11月5日号掲載)