無実ながら、第二次世界大戦後のB級戦犯として絞首刑に処せられた清水豊松。映画『私は貝になりたい』のストーリーを演じ、自らの解釈を加える木津川計さんの一人語り劇場が12月4日、和歌山市西高松の松下会館で開かれ、120人が戦争の不条理に思いをはせた。
第二次大戦中、死にかかっていた捕虜の米兵を処分するよう命ぜられた豊松は、気の弱さからとどめを刺すことができなかった。戦後、地元に帰り平和に暮らしているところを収監され、戦犯として裁かれた挙げ句、死刑が宣告された。
「(捕虜を処刑せよという)上官の命令は良いことだと思いましたか」など、当時の日本軍の実情が分からない米軍による尋問の様子を木津川さんが口演。豊松は命ぜられて死に、一方で、同時期に公開されたイタリアの戦争映画では、主人公が良心を示して自ら死を選んだと紹介し、日本とイタリアの映画が表現したことの違いを論じた。
木津川さんのラジオ番組でファンになったと話す海南市の石田文雄さんは「戦争に立ち向かわず、何もしないのが罪との話が響きました」、妻の洋子さんは「気づいた時に戦争は始まっているとの話は、今の時代、特に心に残ります」。また、戦争をどう解釈をするのか気になっていた女性は「映画を対比した説明が、胸に刺さりました」と感心していた。
(2016年12月10日号掲載)