はっぴいえんどに吉田拓郎、たま、アルフィー、ボ・ガンボス…。昭和懐かしのフォークやロックをルーツに挙げるのは、桐蔭高校2年の中口環太さん。「和(わ)・ケンミンズ」の名でステージに立ち、和歌山を舞台にした歌詞を、フォーク調のメロディーにのせる高校生シンガーだ。
小6でビートルズを聴いて音楽に目覚め、中3でギターを手に。受験の息抜きにと先輩2人とアルフィーのコピーバンドを組んだのをきっかけに、楽曲を作り始めた。現代っ子らしくタブレット端末を駆使し、ドラムやベースの打ち込み音に生音のアコースティックギターと歌声をのせる。
インターネットで古い歌謡曲やロックを聴きあさり、中でもはっぴいえんどの抽象的な表現で景色を切り取る世界観に影響を受けた。和歌山を舞台にしつつ、いわゆるご当地ソングとは違う、日常での気持ちを込める。
オリジナル曲『海と歩いた』では「都会(まち)へ出るんだと あの娘馬鹿を言うんだぜ おいらこのままさ 海と歩いていくんだ」、『みなとのまつり』では「ビルや人間や車のあるなしで 全てを知った気で居る奴を 寂しい人と呼んでやる」と独特の目線で郷土愛を表現する。
これまでCD2枚を自主制作し、昨年の夏休みには毎週末、南海和歌山市駅前でストリートライブを開いて販売した。「人に物を売る体験は生まれて初めてで、財布を開かれそうになったらついついあげてしまいました」と苦笑い。
ライブを見た和歌山大学生に誘われ、秋に市駅前のイベントで歌ったのを皮切りに、他のライブにも呼ばれるようになった。音楽活動に加え、美術部と創作部、放送部を掛け持ちする忙しい毎日を送る。
「人が多く、空が狭い東京には住めないと思う。これからも和歌山の原風景を歌っていきたい。〝紀州のはっぴいえんど〟と呼ばれればうれしいですね」
写真=独特の目線で郷土愛を表現する中口さん
(2017年1月7日号掲載)