農家の収入アップと担い手増加を目指し、和歌山市農業委員会会長の谷河績(いさお)さんが昨年、稲の品種「いのちの壱」の栽培に同市で初めて成功した。通常米の2倍以上の価格で取り引きされる高級米で、1月24日には尾花正啓市長に初収穫した米を届けた。谷河さんは「高価で売れる米が普及すれば、農家を志す若者も増える。地元のブランド米に育てたい」と意気込んでいる。
2000年9月に岐阜県下呂市で発見された「いのちの壱」。通常米より実が1・5倍長く、粘り、香り、弾力が強い。精米しても劣化しにくいと高く評価される。発見した農家と契約を結んだところにしか種もみが提供されない米だが、谷河さんは昨年1月、農業雑誌で「市販されている玄米から栽培に成功した」との記事を読み、自宅の田で栽培を試みた。
玄米を苗床に植えると発芽。しかし、根の成長が悪く、弱かったため、機械での田植えを断念し、手で植えた。この後は順調に育ち、4㌃から120㌔を収穫した。水分、タンパク質、アミロースの成分量で判定する食味値は、一般的な米の65~75点に対し「いのちの壱」は83点。粘りを左右するアミロースは新潟産コシヒカリとほぼ同等の17・6%だった。
試食した尾花市長は「モチモチ感があり、米の香りが強い」と評価。「遊休農地が増える中、価値の高い米が農業にとって希望の星になる」と期待を込めた。谷河さんは「炊いてから2日経っても味は変わりません」と胸を張った。今年は1㌶での栽培を計画しており、同委員会と市が連携し、農家への普及を図る。
写真=新種米の栽培に成功した谷河さん(左)
(ニュース和歌山より。2017年2月8日更新)