江戸時代後期の武家屋敷で和歌山市堀止東に残っていた市指定文化財の大村家住宅長屋門が同市岡山丁の岡公園へ移設され、8日から公開されている。建築当時の瓦や重厚な門からなる珍しい建物で、尾花正啓市長は「白と黒の格子状の海鼠(なまこ)壁が特徴。和歌山城のすぐ南の地から、城下町の歴史、文化を発信したい」と熱を込める。
長屋門は18世紀後半~19世紀初めに同市東坂ノ上丁に建設されたとみられる。紀州藩士、大村弥兵衛の家の一部で、門と住居が一体となっており、使用人の住まいとして使われた。平屋で一部2階建て、間口23㍍、奥行き5㍍。海鼠壁や梁(はり)に使われた木材のほか、瓦も可能な限り江戸時代のものを使う。かんぬきを支える金具や門の下部に装飾が施され、武家屋敷の格式の高さがうかがえる。
1897年ごろに堀止東に移され、2014年まで所有者が住んでいた。取り壊し計画があったが、和歌山県が移設を決め、解体と組み立ては県、周辺整備は市が担当した。早速、見学に訪れた同市新留丁の出(で)泰之さんは「母屋がないのは残念ですが、貴重な建築が保存されたのは良かった」と笑顔を見せていた。
和歌山城で出土した家紋が入った瓦や陶器、貝がらを展示中。午前9時~午後5時。無料。当面は無休。城整備企画課(073・435・1044)。
写真=格子状の海鼠壁
(ニュース和歌山/2017年7月15日更新)