人力車を引き日本を縦断する秋田出身の冒険家、阿部雅龍(まさたつ)さん(34)が7月12日、和歌山市秋月の日前宮に立ち寄った。幼いころから夢に描く南極点到達に向け、全国68の一宮で実現の誓いを立てており、同郷の先人で南極探検隊員だった白瀬矗(のぶ)さんの「人間は目的に向かって、剛直にまっすぐ進むべきものである」との言葉を胸に、チャレンジを続けている。

 一宮巡りは2月に鹿児島でスタート。重さ100㌔を超える人力車を引き、秋田まで6000㌔を歩く。日本の伝統文化である人力車の魅力を伝えながら、南極でソリを引くトレーニングを兼ねる。

 これまで山陰、北近畿、山陽、四国と回り、この日は徳島からフェリーで和歌山に渡り、37社目となる日前宮へ。居合わせたひのくま幼稚園の子どもたちを人力車に乗せた。「応援してくれる人が多ければ成功する。人とのつながりを大切に」との気持ちからだ。

 1912年に南極点を目標にしながら、激しい吹雪のため途中で断念した白瀬さんの挑戦を幼いころに知り、南極への思いを持ち続ける。

 今後、2018年末にノーマルルートと呼ばれる1100㌔のコースで南極点を目指し、19年末には白瀬さんが断念した1500㌔に及ぶ別ルートで再挑戦する。食料などすべて自分一人で運ぶ単独無補給での制覇に挑む。「白瀬ルートは3000㍍以上ある南極山脈を越えなければならず、だれも達成していない。100年以上を経て、果たせなかった夢を実現したい」

 10月には秋田にある白瀬さんの墓前に、南極点への思いを報告する。

写真=37社目の日前宮を訪れた阿部さん

(ニュース和歌山/2017年7月22日更新)