ドイツ暮らし経験を持つ異色の和食料理人、竹田達矢さん(48)がオーナーシェフを務める和歌山市太田の人気店「かるとふぇる。」。ドイツ料理、和食の枠を越え、50種類以上のメニューが並ぶ。「〝おいしい〟に垣根はない。固定概念を取り払い、色んな組み合わせを楽しんで」。エネルギッシュに腕を振るう。
ドイツ料理店に刺身?
「本日のお造り」。メニュー表の一番上に書かれた言葉だ。ドイツ料理のメニューを探すと…、「別紙メニューをご覧下さい」──?
「『ドイツ料理店なのに、なぜお造りがあるの?』と尋ねるお客様もいます。初めて来る方はドイツ料理を選びますが、常連さんには和食だけを注文される方もいますよ」
自家製ヴルスト(ソーセージ)、豚肉と玉ネギをワインで煮込んだソースたっぷりのグーラッシェオムライスなどのドイツ料理とともに、旬の魚を使った刺身や天ぷらなどを堪能できる。和独を融合させた創作鍋も人気だ。
「ヴルストは本場の肉感にこだわり、手回しの腸詰め機で詰めます。備長炭を練り込んだ和歌山ヴルストは真っ黒な見た目と裏腹にソフトな食感です。ヴルストの中の豚肉を団子にしたヴルスト鍋は、昆布とかつお節のだしによく合い好評です」
待つ時間も楽しむ
和歌山市出身。17歳で食の世界へ飛び込み、和歌山と大阪の割ぽうで6年間腕を磨き、修業先の料理長の紹介で、ドイツへ渡った。ワイン用のブドウ畑が広がるのどかな田舎町。日本食弁当店で働く傍ら、合間を見つけては隣にあるドイツレストランのシェフから現地の料理について指導を仰いだ。
「みそやしょうゆを使って料理すると、不思議そうな顔をされたものの、出した料理を食べると『おいしい』と言ってくれた。おいしいものに垣根はないと痛感しました」
2001年に、ふるさとで自分の店を構えた。
「ヴルストは注文を受けてから20分かけてゆでる。向こうの人たちは待つ時間も陽気に楽しむんです。そんな文化を感じてもらいたいと、うちの店でも同じようにしています。ドイツに行ったことで、旬を大事にする和食の特徴を再確認できました。旬にはこだわっていきたいし、和独以外も自由に組み合わせを楽しめるよう、今後もメニューを増やしたい」
新たな〝おいしい〟を模索し続ける店で、多くの客がきょうもジョッキを傾ける。
かるとふぇる。…和歌山市太田2-14-9、AZUMA太田ビル1階。17:30〜23:00(ラストオーダー22:00)。日曜定休。火曜、木曜のみランチ営業で鶏そばを提供。12:00〜14:00(ラストオーダー13:45)。電話073・474・3600
(ニュース和歌山/2017年7月26日更新)