和歌山ユネスコ協会は7月17日、宮城県名取市の「名取熊野三山」でウォークイベントを開いた。ユネスコ協会の全国大会に合わせ、和歌山と縁の深い同霊場を知ってもらおうと企画し、約30人と東北の熊野を踏みしめた。
約900年前に名取の老女が勧請(神仏の分身を移してまつること)したと伝わる名取熊野三山。本宮、那智、速玉(新宮)の3社に加え、地理的、方角的に同じ配置に再現された写し霊場は、全国各地にある熊野神社の中で唯一で、東北地方の熊野信仰の一大拠点として親しまれてきた。
ウォークは、同協会の高垣晴夫さんらが東日本大震災以降、毎年ボランティアで宮城県を訪れる中、和歌山とつながりのある名取熊野三山を知ったのがきっかけ。両県の絆を確かめ、平和について考えるイベントを開催した。
当日は、名取市文化財保護審議会の惠美昌之さんが、熊野新宮社から那智社、本宮社と順に案内した。和歌山と同様に滝がある那智社では、高台から仙台平野を一望でき、惠美さんが「仙台湾を熊野灘、名取川を熊野川と見立てると、この地が熊野三山の縮図であると分かります」と解説。震災後、文化財を博物館に預けていることも説明し、今なお残る震災の影響をにじませた。
参加した仙台ユネスコ協会の加藤幸子さんは「和歌山の熊野古道を歩いたことがあり、重なる風景がいくつも見つかりました。地元ながらあまり良さを知らなかったので、こうした史跡に丁寧に目を向けていく大切さを学びました」と笑顔。高垣さんは「世界遺産を歩くことは自然を愛することにつながり、それが持続可能な社会へと続いてゆく。世界遺産と結びつきの深い霊場を舞台に、そうした体験をしてもらう機会になりました」と喜んでいた。
(ニュース和歌山/2017年7月29日更新)