建物の床下や壁の奥に潜むシロアリを、きゅう覚で探し出す探知犬が活躍している。和歌山市有本のアサンテ(本社=東京)に〝勤務〟するビートだ。関西では唯一で、個人宅や寺などで活動する。
関西初の探知犬ビート活躍中
「シーク!」(英語で「探せ」の意味)。合図が出るやいなや、密閉した6つのプラスチック容器を順にかぐビート。その中からシロアリをかぎわけ、静かにその場に座る。2歳オスのビーグル犬。日々の訓練は現場で活動するために欠かせない。
2006年に日本で初めてシロアリ探知犬を導入した同社によると、アメリカでは数百頭が活躍するが、国内ではまだ数頭。訓練を経て現場に出られるのは10頭に1頭で、指導担当の丸山省吾さんは「かぎわけ能力のほか、ほえない、動じない、人なつっこいといった性格も重要です」。
今までは床下に入って目視や、木材の音で判断する打診で、詳しく調査していた。壁の中にいる場合は壁に機械を当て調査するが、一度に広範囲を調べるのが難しく、時間がかかる。
犬のきゅう覚は人間の100万倍以上。地中にシロアリが50匹いる場合、深さ1・8㍍までなら見つけられる。丸山さんは「アメリカでは、探知犬が調査した証明書がなければ、中古物件を売れない州もあるほど信頼性が高い調査法。壊さなければ分からないところ、人が入りにくいところも犬はにおいで判断し、発見率の向上と時間短縮に一役買っています」。
国内で建物に被害を与えるシロアリは、ヤマトシロアリとイエシロアリ、アメリカカンザイシロアリ、ダイコクシロアリの4種類。高温多湿で海に面した和歌山では、イエシロアリの生息が多い。イエシロアリは侵食が早く、床下だけではなく家全体にはびこるため、一度に駆除するのが難しく、被害が大きくなりやすい。このようなことから、昨年10月、ビートの和歌山への〝配属〟が決まった。
丸山さんは「阪神淡路大震災で倒壊した建物の8割以上は、シロアリ被害に遭っていたとの調査結果があります。南海トラフ地震が懸念される和歌山で今後も活躍してくれれば」と期待している。
写真=丸山さんと日々の訓練を欠かさないビート
(ニュース和歌山/2017年8月12日更新)