自身が考えるこだわりの味と、客が求める味のギャップから、一時、閉店した手打ちそば専門店が8月、再開した。和歌山市屋形町の「そば切 徳」。「『閉店する前よりおいしい』との常連さんの言葉がありがたい。自分がおいしいと思うそばを追求する。ただそれだけです」。店主の徳重芳夫さん(44)は自慢の冷たいそばで勝負する。

個性を出せる


 北海道産のそばの実を、外皮がついたまま、若干、粗めに臼(うす)で挽(ひ)く。このそば粉を手打ちし、ゆで作業へ。盛りつけも、はしで持ち上げた時、そばがさっと解けるよう、細心の注意を払う。

 「挽く作業は1回だけの人もいるし、数回挽く人もいる。私は1回、2回、3回挽いた3種類をブレンドしたものを使う。そばの味を感じやすいんです。そばは疲労回復に効果があるビタミンB1や美肌に良いビタミンB2、食物繊維などが豊富。栄養価の高い外皮部分も一緒においしく食べてもらえます」

 そば店を構える前は、和歌山市内の老舗魚料理店で約7年間、板前をした。勤めて5年がたったころ、店でそばを出すことになった。

 「そば打ちを任された数人のうちの一人が私。『そばは個性を出せる』と感じました」

 

閉店、そして再開

 30歳を迎えた2004年に独立。自宅を改装し、「そば切 徳」を開いた。つなぎを極力減らした自慢のそばは、温かい出汁(だし)に入れるとコシがなくなってしまう。しかし、注文は温かいそばに集まる。その悩みから体調を崩し、15年末に閉店した。

 「その後、そばから一時、離れましたが、大先輩が開いたそば打ち教室を手伝った時、『やっぱり自分はそばが好きだ』と再認識しました」

 1年8ヵ月の充電期間を経て再開した後は、冷たいそばだけを出すと決めた。本わさびは出汁に溶かず、そばに直接のせ、そしてそばは濃いめに味付けした出汁に少しだけ付けて口の中へ。そばの豊かな香りが広がる。

 「そばと出汁、店によって特徴があり、相性もあり、おいしい食べ方は違う。うちの店の場合はこの食べ方が一番です。冷たいそばは夏のイメージがあるでしょう? 新米と同じで、新そばが出始める9月から冬にかけてがおいしい季節なんですよ」

 旬のそばを前にし、そばを打つ手にますます力が入る。

写真=人気の免疫力UPランチ

そば切 徳】和歌山市屋形町4-15-1。昼=午前11時半〜午後2時半(LO=2時)、夜=6時〜9時(LO=8時半)。日曜と月曜、木曜夜は休み。073・427・3456

(ニュース和歌山/2017年10月11日更新)